先日、ある社長からこんな相談を受けました。

「去年、念願のマイホームを買ったんですよ。でも税理士に後から『それ、法人名義にすれば良かったですね』って言われて……」

年収2,000万円超の社長が、個人名義で1億円の自宅を購入。節税の観点からは、かなりもったいない選択をしていたのです。

もしあなたが今、自宅の購入を検討しているなら、あるいはすでに個人名義で持っているなら、この記事をぜひ読んでみてください。法人名義で自宅を持つという選択肢が、いかに強力な節税手段になるかをお伝えします。


まず「固定費」を丸ごと経費にできる

個人で自宅を持つと、修繕費も固定資産税も完全に自腹です。どれだけ稼いでいても、税引き後の手取りから払うしかない。これが地味に痛い。

一方、法人名義で物件を保有すれば、これらは会社の経費として計上できます。築年数が経った物件なら修繕費だけで年間数十万円になることもあります。固定資産税も合わせれば、毎年50〜80万円の経費が生まれるケースも珍しくありません。

「たかが固定資産税」と思うかもしれませんが、法人税率を30%とすると、年間60万円の経費化で約18万円の節税。10年で180万円です。小さく見えて、積み重なると無視できない金額になります。


建物の「減価償却」で毎年利益を圧縮できる

不動産節税の中でも特に強力なのが、この減価償却の活用です。

建物は年々古くなる、という考え方のもと、その取得費用を毎年少しずつ経費として落とすことができます。土地は対象外ですが、建物部分は法定耐用年数に従って毎年経費化できるのです。

仮に1億円の物件で、うち6,000万円が建物部分だとします。木造なら耐用年数22年なので、単純計算で年間約270万円が経費になります。鉄筋コンクリートなら耐用年数47年で年間約130万円。いずれにしても、キャッシュアウトなしで毎年100万円超の経費が生まれるわけです。

会社の利益が出ている年ほど、この「帳簿上の経費」が効いてきます。実際にお金を使っていないのに利益が圧縮され、法人税が下がる。これが不動産を使った節税の本質です。


社長が「格安で借りる」社宅スキームが最強

ここが一番のポイントです。

法人が物件を持ち、社長がその会社から「社宅」として借りる形を取ると、役員報酬の一部を現物支給として扱えます。つまり、住居費というプライベートな支出を、節税スキームの中に組み込めるのです。

具体的にどういうことか。社長が会社から毎月5万円の家賃で社宅を借りたとします。本来なら30万円の市場家賃でも、税法上の計算式に基づいた「適正な賃料」を払えばよいので、差額分は経済的利益として低く評価されます。これにより、役員報酬を下げながら実質的な生活水準を維持できるのです。

役員報酬が下がれば、所得税と社会保険料が下がります。一方で会社は賃料収入を得つつ、物件に関わる費用を経費計上できる。社長の手取りが増えて、会社も節税できる——まさに一石二鳥の仕組みです。

ただし、この社宅家賃の計算方法は税法上の規定が細かく、物件の床面積や固定資産税評価額をもとに算出するため、「なんとなく安い家賃にする」では追徴課税のリスクがあります。必ず事前に税理士と一緒に計算するようにしてください。


「法人名義」にするタイミングが重要

このスキームで一点注意したいのは、購入前に設計しておくことが大前提だという点です。

個人名義で購入した物件を後から法人に移すと、不動産取得税や登録免許税が再度かかり、場合によっては譲渡所得税も発生します。「やっぱり法人に移そう」と後から動くと、コストが二重にかかってしまうのです。

これから自宅や投資用物件の購入を考えている社長は、契約の前に税理士へ相談することを強くおすすめします。購入後では取れない選択肢が、購入前なら取れることがたくさんあります。


法人名義での自宅購入は、「お金持ちの特別な節税」ではありません。ある程度の利益が出ている会社を持つ社長なら、十分に検討に値する現実的な手段です。

もし今期の決算が近づいていて、利益が予想より出ているという方は、ぜひ今すぐ顧問税理士に「社宅スキームって使えますか?」と聞いてみてください。その一言が、数百万円の節税につながる入口になるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。