先日、年商3億ほどの IT 系の会社を経営する社長とランチをしていたとき、こんな話が出ました。
「毎月けっこうな金額を本やセミナーに使ってるんだけど、税理士に『これは難しい』って言われてずっと自腹にしてるんだよね」
ちょっと待ってください。本当に全部ダメだったんでしょうか。話を聞けば聞くほど、経費にできるものがごっそり抜け落ちていた可能性が高い状況でした。
「本代は経費にならない」という思い込みが損を生む
書籍代やセミナー費用は、正式には研修費・図書費・諸会費などの勘定科目で損金に落とせます。「個人的な趣味なら当然NG」ですが、事業に関連するものであれば話は別です。
知らない社長は毎年何十万円も自腹で払い続けます。一方、きちんと整理している社長は年間50万円以上を堂々と損金にしている。その差はどこから生まれるのか。実は「何をどう記録しておくか」という、ほんの少しの習慣の違いだったりします。
経費にするための3つのポイント
① 事業との関連性を言葉にしておく
「なんとなく仕事に役立ちそう」では税務調査のときに説明できません。「新規事業の市場調査のために購入」「営業トークの改善を目的に受講」など、購入・参加した理由を自分の言葉で説明できる状態にしておくことが大切です。
これは難しいことではなく、「なぜ買ったか・なぜ参加したか」を一言メモしておくだけでいい。
② 領収書にひと言メモを残す
領収書をもらったら、その場でペンを走らせてください。「〇〇プロジェクトの参考資料として購入」「来期の採用戦略の勉強のため」──そんな短いメモが、後から見たときの証拠になります。
電子領収書ならメモ欄やファイル名に記載しておくだけでOKです。たった10秒の作業が、数万円の節税を守ってくれます。
③ 社員への研修・教育目的なら特に強い
社長一人が読む本よりも、「社員に読ませた」「チームで受講した」という実態があると、より経費性は認められやすくなります。たとえば30万円のセミナーを会社で受講し、法人税率が30%だとすれば、約9万円の節税効果があります。
社員教育という名目が加わると「会社としての支出」という説明がさらにしやすくなりますし、実際に組織にとってプラスになる投資でもあります。一石二鳥というわけです。
「趣味との混同」だけは要注意
ここで必ず触れておかなければいけないのが、趣味系のコンテンツとの境界線です。
釣りの雑誌、料理の本、ゴルフのレッスン費用──これらは「接待に使うから」という理由をつけたくなる気持ちはわかりますが、直接的な事業関連性を説明しにくいため、税務調査で指摘を受けるリスクが高い。
あくまで「その支出がなければ事業に支障が出るか、または事業の改善・拡大に直結するか」という視点で判断するのが基本です。グレーだと感じたら、担当の税理士に一度確認するのが安心です。
「記録する習慣」が節税の土台になる
節税というと「特別な仕組みを作る」イメージを持つ社長が多いのですが、書籍・セミナー費用に関して言えば、必要なのは特別な制度ではなく記録する習慣です。
買った瞬間にメモをする。領収書をもらう。事業との関連を言語化する。この3つだけで、毎年自腹になっていた支出が会社の経費に変わっていきます。
積み重なれば年間で数十万円になることも珍しくありません。「どうせ本代なんて」と思っていた社長ほど、見直すと意外な金額が出てくることがあります。今期の支出を一度棚卸しして、経費にできていないものが残っていないか確認してみるのをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。