先日、年商5億円の製造業を経営する田中社長(仮名)から、こんな話を聞きました。

「在庫管理のシステムをクラウドに切り替えたんですが、税理士に相談したら思っていた以上に節税できてびっくりしました」

その額、なんと360万円超。しかも、特別な裏技ではなく、国が用意している制度をきちんと使っただけの話です。


クラウドに切り替えたら、税金が360万円減った

田中社長が活用したのは「DX投資促進税制」という制度です。デジタルトランスフォーメーション(DX)を後押しするために設けられたもので、対象となる投資に対して税額控除や特別償却が受けられます。

田中社長のケースでは、在庫管理システムのクラウド導入に約2000万円を投じました。この費用に対して、まず税額控除3%が適用されました。2000万円の3%ですから、約60万円が法人税からそのままダイレクトに差し引かれます。

「経費にする」のと「税額控除」は、似ているようで全然違います。経費はあくまで利益を減らすものですが、税額控除は計算された税金そのものを削る、いわばより強力な節税手段です。

さらに田中社長が使ったのが、特別償却30%という仕組みです。通常、設備投資の費用は数年かけて少しずつ経費にしていくのですが、特別償却を使うと、その一部を導入初年度に前倒しで計上できます。2000万円の30%は600万円。この600万円を初年度の経費に上乗せできるので、仮に実効税率が約50%(法人税+地方税)の会社であれば、税負担は約300万円分軽くなる計算です。

税額控除の60万円と合わせると、合計360万円以上の節税効果。田中社長が「普通に経費にするだけじゃもったいなかった」と感じたのも、無理はありません。


中小企業はさらに有利な条件がある

ここで特に注目していただきたいのが、中小企業への優遇です。

先ほどの田中社長の例では税額控除3%でしたが、中小企業の場合は要件を満たせば**5%**まで引き上げられる場合があります。同じ2000万円の投資なら、控除額は100万円に跳ね上がります。

DX投資促進税制の対象となるのは、大まかに以下のようなものです。

  • クラウドサービスの導入費用(SaaS・IaaSなど)
  • 業務用ソフトウェアの購入・開発費
  • AIツールや自動化ツールへの投資

つまり、最近多くの会社が取り組んでいる「会計ソフトをクラウドに移行する」「在庫や顧客情報をシステム化する」「AIを使った業務効率化ツールを入れる」といった投資が、丸ごと対象になり得るのです。

DX化を検討しているなら、どうせやるなら税制を活用しない手はありません。


ただし、「後から申請すればいい」は通じない

ここで一つ、重要な注意点をお伝えしておきます。

DX投資促進税制は、事前申請や要件の確認が必要な制度です。「導入してから後で申請すればいい」と考えていると、適用できないケースがあります。

具体的には、対象設備の確認、事業計画との整合性、申請書類の準備など、複数のステップを踏む必要があります。特に、どの費用がどの控除の対象になるかは、細かく要件が定められているため、素人判断は禁物です。

「DX化を検討している」という段階で、一度税理士に相談しておくのがベストです。設備を入れてしまってから相談すると、「あのとき一言言ってくれれば…」ということになりかねません。


今期、DXの予定があるなら今すぐ動く

国がDX化を推進している今、こういった優遇税制は追い風です。しかし制度には期限があり、要件も変わることがあります。「来期でいいか」と先送りにしているうちに、条件が変わってしまうこともあります。

田中社長のように、2000万円の投資で360万円以上の節税ができるなら、実質的なコストは大きく変わります。投資の意思決定そのものに影響するレベルの話です。

クラウド化やシステム導入を今期中に検討しているなら、まず税理士にDX投資促進税制の適用可能性を確認することをおすすめします。「節税のために投資する」のではなく、「どうせ必要な投資なら、きちんと税制を使い切る」という発想で動いてみてください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。