先日、12月決算の会社を経営する社長からこんな相談を受けました。

「税理士に決算を任せているんですが、毎年なんとなく終わっていて、自分でも節税できているのか正直よくわからなくて」

その会社の試算表を見せてもらったところ、ある項目がごっそり抜けていることに気づきました。未払費用です。やっていない会社は、純粋にもったいない。今日はその話をします。


「払っていない」は「経費にならない」ではない

多くの社長が誤解しているのですが、経費になるかどうかのポイントは「支払ったかどうか」ではありません。「その期に費用が発生したかどうか」です。

税務の世界では、これを発生主義と呼びます。つまり、今期中にサービスを受けた・債務が確定した費用であれば、実際の支払いが来期になっても、今期の経費として計上できるんです。

これを活用するのが「未払費用の計上」という決算テクニック。難しい話に聞こえますが、やることはシンプルです。


具体的にどんな費用が対象になるか

最もわかりやすいのが、給与と社会保険料です。

12月決算の会社で、12月分の給与を翌月1月に支払うケースはよくあります。この場合、12月分の給与はあくまで「12月に発生した費用」ですから、12月の決算で経費に計上できます。支払いが1月でも関係ありません。

仮に月次の給与総額が500万円だとすると、法人税率を約25%で計算すれば、それだけで125万円の節税効果になります。これを見落としているとしたら、相当もったいないですよね。

給与以外にも、以下のようなものが対象になります。

  • 顧問税理士や社労士への未払い顧問料
  • 翌月払いになっている事務所家賃
  • 借入金に対する未払利息
  • 12月分のコンサルティング費用(請求書が翌月でも)

共通しているのは「今期中にサービスや債務が確定しているかどうか」という点です。


なぜ見落とされるのか

未払費用の計上は、決算整理仕訳のひとつです。日々の経理では出てこない処理なので、経営者の目に触れにくいんです。

また、顧問税理士がいても「社長から特に確認がなければそのまま」というケースが意外と多い。決算書を渡されて「ハンコをお願いします」で終わっている会社は、一度きちんと確認してみることをおすすめします。

節税は、派手な手法ばかりが目立ちますが、こうした「やっていれば当たり前にできること」を丁寧に積み上げることのほうが、長い目で見ると効いてきます。


計上するときの注意点

とはいえ、なんでも未払費用にしていいわけではありません。いくつかルールがあります。

まず、費用の発生が合理的に説明できること。「なんとなく来期も費用がかかりそうだから計上する」はNGです。給与や家賃のように、期末時点で金額と債務が明確なものに限ります。

次に、証拠書類の整備。給与台帳、顧問契約書、賃貸借契約書など、「この金額が発生していた」と証明できる書類を残しておくことが重要です。税務調査が入ったときに説明できる状態にしておきましょう。

そして、翌期に実際に支払うこと。未払費用として計上した金額は、翌期にきちんと支払われることが前提です。実態のない計上は認められません。


決算月の前に動けるかどうかが勝負

未払費用の計上は、決算日を過ぎてからではできません。期末の時点で発生している費用が対象ですから、決算月に入ったら早めに顧問税理士と確認するのが鉄則です。

「どうせ税理士がやってくれる」と思っているかもしれませんが、経営者側から「うちの未払費用、ちゃんと全部拾えていますか?」と一声かけるだけで、結果が変わることがあります。

数十万円の節税は、何か特別なことをしなくても、正しく処理するだけで手元に残せるお金です。決算前に一度、自社の経費発生状況を棚卸しする習慣をつけておくと、じわじわ効いてきますよ。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。