先日、ある製造業の社長からこんな連絡が届きました。

「税理士さんに試算してもらったら、今期5000万円近く利益が出そうで……。このまま決算を迎えたら税金だけで1500万円近く消えるって言われたんですが、何かできることはありますか?」

決算まであと1ヶ月。焦りと諦めが混じったような文面でした。でも、実はこのタイミングでも打てる手はあります。今回はそんな「決算直前の緊急節税」として、特に効果の大きい3つの方法をお伝えします。


即効性ナンバーワン:航空機オペレーティングリース

まず、「とにかく今期の利益を圧縮したい」という方に真っ先に紹介したいのが、航空機オペレーティングリースへの出資です。

仕組みをざっくり説明すると、航空会社に貸し出す航空機をSPC(特別目的会社)が購入し、そこに出資するという形です。会計上、初年度に出資額の80〜90%を損金として計上できるため、5000万円を出資すれば、4000万円以上が今期の利益から差し引かれます。

税引き前利益が5000万円あったとして、そのうち4000万円が消えれば、課税対象はぐっと圧縮されます。計算上、節税効果は1000万円を超えることも珍しくありません。

ただし注意点があります。これはあくまで「繰り延べ」であり、リース期間終了後には益金が戻ってきます。将来の利益が低い時期に合わせて出口を設計する必要があるため、税理士との事前の綿密なシミュレーションが欠かせません。また、募集枠がすぐに埋まることが多く、決算直前は特に動きが速いので、検討するなら今すぐ動く必要があります。


資産も手元に残る:設備投資×即時償却

次に紹介したいのが、中小企業経営強化税制を活用した設備投資です。

この制度を使うと、対象設備の取得価格を100%即時償却できます。つまり5000万円の設備を購入すれば、5000万円まるごと今期の損金になるということです。

航空機リースとの大きな違いは、「手元に資産が残る」点です。工場の機械設備、ITシステム、医療機器など、事業に必要な設備を導入しながら節税ができるのですから、まさに一石二鳥です。

もちろん、「節税のためだけに要らない設備を買う」のは本末転倒です。元々導入を検討していた設備があるなら、今期中に動くのが賢い選択です。また、この税制には経営力向上計画の認定取得など、事前の手続きが必要なケースがあります。決算直前であれば時間的な余裕は多くないので、すぐに税理士や商工会議所に相談することをおすすめします。


退職金も準備しながら:法人保険の短期払い

3つ目は、法人保険を使った対策です。特に「逓増定期保険」などを短期払いで契約する方法が注目されています。

保険料の一部を損金として計上しながら、同時に将来の役員退職金の原資を積み立てられる点が魅力です。節税しながら「いざというときの備え」を用意できる、バランスの取れた手法と言えます。

ただし、2019年以降の税制改正で保険商品への規制は強化されており、以前ほど「全額損金」という商品は少なくなりました。損金算入できる割合は商品によって異なるため、「節税効果がどのくらいあるか」は個別に確認が必要です。保険会社の営業担当者だけでなく、必ず顧問税理士にも意見を求めてください。


3つの方法、どれを選ぶべき?

まとめて比較すると、それぞれの特徴はこうなります。

  • 航空機リース:節税効果は大きいが、将来の益金戻りがある。今すぐ現金を動かせる方向け。
  • 設備即時償却:資産が残る。元々投資予定があるなら最優先で検討すべき。
  • 法人保険:退職金準備と節税を両立したい方向け。損金算入割合の確認が必須。

どれが正解かは、会社のキャッシュフロー、将来の利益見込み、経営者の年齢や退職プランによって変わります。「とにかく1つ試してみよう」ではなく、自社の状況に合わせた組み合わせを税理士と一緒に考えることが大切です。


決算が近づいてから慌てるのは、毎年のことかもしれません。でも、対策は「知っているかどうか」で大きく変わります。まだ顧問税理士にこれらの手法を相談したことがなければ、今期の決算前に一度、節税のシミュレーションをお願いしてみてください。1500万円の差は、経営の選択肢を大きく広げてくれます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。