先日、ある社長からこんな連絡が来ました。「来月が決算なんですが、利益が出すぎていて……何か手はありますか?」

利益が出ること自体は喜ばしいことです。ただ、何も手を打たないまま決算を迎えると、その分だけ法人税がドカンとのしかかってくる。これが中小企業の社長にとって、毎年繰り返される悩みです。

今回は、そんな「決算直前」でも使える節税策として、短期前払費用の特例をご紹介します。知っている社長と知らない社長で、納税額に100万円以上の差がつくこともある話です。

「前払い」が経費になる、という逆転発想

通常、費用は「サービスを受けた期間」に対応して計上するのが原則です。たとえば来期4月分の家賃は、今期3月決算の帳簿には載らない、というのが基本の考え方です。

ところが、短期前払費用の特例を使うと、この原則に例外が認められます。一定の条件を満たせば、来期分の費用を今期に一括で経費計上できるのです。

イメージとしては、「来年1年分をまとめて払うことで、今期の利益を圧縮できる」という仕組みです。

使える費用の例と、100万円の試算

具体的にどんな費用に使えるかというと、毎月コンスタントに発生しているもの——家賃、生命保険料、損害保険料、税理士や社労士への顧問料、サービス利用料など——が対象になりやすいです。

仮に月額の経費がこんな内訳だったとします。

  • 事務所家賃:月30万円
  • 各種保険料:月5万円
  • 顧問料(税理士・社労士等):月10万円

合計で月45万円。これを年払いに切り替えると、1年分の540万円が今期の経費として計上可能になります。実効税率30%なら、160万円超の節税効果です。もちろん全額が認められるかは個々の契約内容によりますが、ポテンシャルは十分あります。

特例を使うための2つの条件

ただし、何でも前払いすればいいわけではありません。この特例には明確な要件があります。

①前払い期間が1年以内であること

今日から1年以内に提供が完了するサービスでなければなりません。2年分をまとめて払っても、特例は適用できません。「12ヶ月分を一括払い」がギリギリのラインです。

②継続して同じ処理をすること

「今年だけ節税したいから年払いにして、来年は月払いに戻す」はNGです。一度年払いにしたら、翌年以降も継続して年払いで処理する必要があります。節税のためだけに毎年ルールを変えることは認められません。

この2点を守ることが、特例適用の大前提です。

決算月に動けるかどうかが分かれ目

実は、この特例の最大のポイントは「タイミング」です。

年払いへの切り替えは、決算月中に支払いを完了させる必要があります。3月決算の会社であれば、3月31日までに実際に口座から出ていくことが条件です。「契約だけして4月に払う」では間に合いません。

多くの社長が知らないまま決算を迎え、「あのとき動いていれば……」と後悔するのがこのケースです。逆に言えば、決算1〜2ヶ月前に顧問税理士と確認しておくだけで、かなり違う結果になります。

注意したいポイント

一点だけ補足しておくと、この特例は「等質等量のサービス」に対してのみ有効です。毎月同じ内容が継続的に提供されるもの——つまり家賃や定額の顧問料——には使いやすい一方で、内容が変動するサービスや、単発のコンサルティング費用には使いにくいケースもあります。

また、契約形態によっては相手方の承諾も必要です。「年払いに変えたい」と申し出たときに断られる可能性もゼロではないので、早めに動いておくのが安心です。

決算直前に慌てて相談に来る社長を毎年見てきましたが、少なくとも2ヶ月前には選択肢を検討しておくのがおすすめです。毎月払っている費用の一覧を税理士と一緒に見直す機会を、ぜひ早めに作ってみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。