先日、年商3億円の建設会社を経営するAさんからこんな質問を受けました。
「自分の車で現場を飛び回っているんですが、個人名義のままで……これって損していますよね?」
損しています。それも、年間15万円単位で。
車の費用、実は年間いくらかかっているか
車は走っているだけでお金がかかります。自動車税、ガソリン代、任意保険料、車検費用、月極駐車場代——これらをざっと合計すると、年間40〜60万円になることは珍しくありません。
これが「個人のお金」から出ている場合、税務上はまったく経費になりません。給与から税引き後のお金で払い続けているわけです。
一方で社用車として会社名義にしていれば、業務利用分はすべて会社の経費になります。年間50万円の車費用を経費化した場合、実効税率30%の会社なら単純計算で年約15万円の節税になります。
「たった15万?」と感じる方もいるかもしれませんが、これが毎年続きます。10年で150万円、20年で300万円の差です。
社用車にすると経費になる費目の範囲
社用車として処理できる費目は、思ったより幅広いです。
- 自動車税・自動車重量税
- ガソリン代・高速道路料金・ETCカード料金
- 自動車保険料(任意保険を含む)
- 車検費用・修理費・定期整備費
- 駐車場代(月極・時間貸し問わず)
- 減価償却費(購入の場合)またはリース料(リースの場合)
車を「購入」した場合は、取得価格を耐用年数に応じて減価償却します。「リース」にした場合はリース料を月々経費に落とせます。どちらが有利かは車両価格や使用期間によって変わるため、一概には言えませんが、リースは資金繰りへの影響が読みやすいという実務上の利点があります。
「全額経費」にはならない場合がある——按分という考え方
ここが最も大事なポイントです。社用車とはいえ、プライベートでも使っている場合は、業務利用分だけを経費にする必要があります。これを「按分」と言います。
税務調査で「社用車として全額経費にしていたが、実際には家族の買い物にも使っていた」と指摘されると、否認されるリスクがあります。
対策はシンプルです。走行記録をつけておくこと。日付・目的地・走行距離・用件を記録しておけば、「業務使用割合は85%」といった根拠を示すことができます。ノートでも専用アプリでも構いません。記録があれば税務署からも認めてもらいやすくなります。
実務的には、週5日以上業務で使っていて、たまに私用があるという社長の場合、80〜90%の業務使用割合で処理しているケースが多いです。
個人名義のまま維持費を会社負担にする方法もある
「すでにローンを組んでいて名義変更が難しい」という場合も、選択肢はあります。
個人と会社の間で使用貸借契約を結び、「社用に使う代わりに、維持費は会社が負担する」という取り決めをする方法です。これにより、ガソリン代や保険料などを会社経費にすることが可能になります。
ただし、この方法は契約内容や実態によって税務上の取り扱いが変わります。導入前に必ず顧問税理士に相談してください。「なんとなくやってみた」では後々困ることになります。
節税の中でも、ハードルが低い部類の対策
節税には、大型の設備投資が必要なものや、決算直前では間に合わないものも多くあります。その点、社用車の経費化は「今すでに使っている車の名義や契約を見直すだけ」で効果が出る、珍しく即効性のある対策です。
業務で車を使っているのに個人名義のまま経費ゼロで処理しているなら、今期中に見直しを検討してみてください。走行記録の管理体制を整えるだけでも、かなりの節税効果が期待できます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。