先日、こんな相談を受けました。

「自分の車を仕事でバリバリ使っているのに、経費にできていないんですよね…」

建設業を営む50代の社長でした。プライベートと兼用のマイカーで営業先を飛び回っているのに、「なんとなく難しそう」という理由で、何年も経費にしないまま放置していたのです。

これ、本当にもったいない話です。条件さえ整えれば、車両本体の購入費用からガソリン代・保険料・車検代まで、まとめて経費に落とせる可能性があります。年間の節税効果が100万円を超えるケースも、決して珍しくありません。

大前提:「会社のもの」にすることがスタートライン

まず押さえておきたいのが、車を会社名義にすることです。

個人名義のまま「社用車として使っています」と主張しても、税務調査では認められにくいのが現実です。契約者・保険・ローンのすべてを法人名義に切り替えることで、はじめて「会社の資産」として処理できるようになります。

すでに個人で所有している車を社用車にしたい場合は、会社が適正な価格で買い取る「売却」という手続きが必要です。手間はかかりますが、ここをしっかりやっておくことが後々の安心につながります。

運転日報は「守り」の最強アイテム

名義を変えるだけでは不十分です。業務で使っている実態を記録として残すことが、2つ目の条件です。

具体的には、運転日報をつけることを習慣にしましょう。日付・訪問先・走行距離・目的をシンプルに記録するだけで構いません。今はスマホアプリでも簡単に管理できます。

この記録が、税務調査のときに「業務用途の証拠」として機能します。逆に言えば、記録がないと「プライベートで使っていたのでは?」と疑われるリスクがあります。面倒でも、日々コツコツ残しておくことが節税を守る盾になるのです。

プライベート分は「按分」で切り分ける

3つ目の条件が、プライベート利用と業務利用を割合で分けて計上する、いわゆる「按分」です。

週5日のうち4日は仕事で使い、週末はプライベートで使う、という場合なら業務利用の割合はおよそ8割。この場合、車にかかる費用の80%を経費として計上するのが妥当な考え方です。

「全部仕事で使っています!」と言い張って100%経費にしても、実態が伴っていなければ税務調査で否認されます。逆に実態に即した割合をきちんと説明できれば、プライベート利用が多少あっても問題にはなりません。大切なのは「嘘をつかないこと」と「説明できること」の2点です。

高級外車でも経費にできる?

よく聞かれるのが「フェラーリやポルシェでも経費になりますか?」という質問です。

結論から言えば、高級外車でも経費計上自体は可能です。法律上、車種に上限額の制限はありません。ただし、実態がともなっていることが絶対条件です。

「社長が週末のドライブにしか使っていない」「走行距離のほとんどが趣味のツーリング」といった実態があれば、いくら会社名義でも経費として認められません。購入金額が大きいほど税務調査での目も厳しくなりますから、高額車を社用車にする場合は特に記録と按分の管理を徹底してください。

3つの条件を整理すると

ここまでの話を整理すると、社用車を経費で落とすために必要なことは次の3点です。

  • ①会社名義で契約・保有する(個人名義のまま経費化はNG)
  • ②運転日報で業務使用の記録を残す(いつ・どこへ・何のために)
  • ③プライベート利用分は按分して経費計上する(実態に合った割合で)

この3つが揃っていれば、車両本体・ガソリン・駐車場代・保険料・車検代、それぞれを適切に経費処理できます。

今期のうちに動いておくのが得策です

「どうせうちは小さい会社だから…」と思っている社長ほど、実は見落としが多い論点です。年間の車関連コストを計算してみると、100万円を超えるケースは意外と多いもの。そのうちの8割でも経費になれば、法人税率30%として24万円の節税効果があります。

名義変更や運転日報の整備は、思い立ったときにすぐ動けるものです。まだ社用車を経費化できていないなら、今期中に一度、顧問税理士に相談してみることをおすすめします。「やっておけばよかった」と後悔するより、「やっておいてよかった」と笑える決算を迎えましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。