先日、ある製造業の社長から「決算までにあと50万円くらい経費を積みたいんだけど、何かいい方法ある?」と相談を受けました。
話を聞いていくと、経費を「新しく作る」必要はまったくなく、すでに使っているお金の「計上の仕方」を見直すだけで、数十万円分の損金が増やせる状態でした。決算前のこの時期、多くの社長が同じ盲点にはまっています。
今日は、決算前に見直すべき代表的な3つのミスについてお話しします。
会議費にできる飲食を交際費のまま計上している
取引先との会食、実は多くの会社で「交際費」として一括処理されています。しかし1人当たり1万円以下の飲食であれば、要件を満たせば「会議費」として全額を損金にできます。
交際費は資本金1億円以下の中小法人でも年800万円までしか損金算入できませんが、会議費にはその上限がありません。同じ飲食代でも、勘定科目ひとつで扱いが変わってくるのです。
要件はそれほど難しくありません。飲食があった年月日、参加者の氏名や関係、人数、金額、店の名称と所在地の5項目を記録しておくこと。領収書の裏にメモ書きするだけでも認められます。
決算前にもう一度、交際費として処理した飲食代の領収書を見直してみてください。1万円以下のものが何件も混ざっているケースは、実はかなり多いです。
30万円未満の資産を普通に減価償却している
2つ目は資産計上です。パソコンや事務機器、工具などを購入したとき、通常は耐用年数に応じて数年かけて減価償却します。
ですが青色申告をしている中小企業には「少額減価償却資産の特例」があり、取得価額30万円未満の資産であれば、年間300万円まで購入した年に全額を損金にできます。
この特例を知らずに、10万円のノートパソコンを律儀に4年かけて償却している社長を何人も見てきました。決算前に駆け込みで備品を買い替える予定があるなら、この特例を使えるかどうかで今期の利益の見え方がまったく変わってきます。
年300万円という枠は決して小さくありません。複数の資産を買う予定がある会社ほど、見直す価値があります。
経費を増やせば税金がまるごと減ると思い込んでいる
そして3つ目、これが一番多い勘違いです。経費を50万円増やしたら、税金も50万円減る、と考えてしまう社長は少なくありません。
実際には、減るのは経費の金額そのものではなく、それに実効税率をかけた分だけです。中小企業の実効税率はおおむね30%前後ですから、50万円の経費を積んでも、手元に残る節税効果はせいぜい15万円前後、つまり2〜3割程度にとどまります。
これ自体は悪い話ではありません。ただ、この感覚を持たずに「経費を使えば使うほど得」と考えてしまうと、本当は不要な支出まで決算前に慌てて作ってしまい、結果的にキャッシュを減らすだけの決算対策になりかねません。
経費を増やす目的が「税金を減らすこと」なのか「会社に必要な投資をすること」なのか、決算前だからこそ一度整理しておく必要があります。
まずは既存の経費の見直しから
交際費と会議費の区分、少額資産の即時償却、そして節税効果の正しい理解。この3つは、新しい支出をひとつも増やさなくても、今ある経費を正しく分類し直すだけで見えてくる話です。
まだ交際費と会議費を厳密に分けていないなら、決算までの間に領収書を見返してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。