先日、相続対策のご相談に来られた社長がいらっしゃいました。「うちの規模で相続税なんて関係ないですよね?」と、笑いながらおっしゃっていたのが印象的でした。

多くの経営者が同じように感じています。しかし実際に試算してみると、想定より重い税負担が待っているケースは少なくありません。

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税には基礎控除という非課税枠があります。計算式はシンプルで、3,000万円に600万円を法定相続人の数だけ掛けた金額を足したものです。

たとえば法定相続人が3人であれば、3,000万円+600万円×3人=4,800万円までは課税されません。この数字だけを見ると「うちは余裕だ」と安心してしまいがちです。

ところが、この4,800万円という壁は、多くの経営者にとって思ったより低い場所にあります。

自宅の評価額が、想像より高く出る

まず見落とされがちなのが自宅の評価額です。都市部に持ち家がある場合、土地の路線価や建物の固定資産税評価額を合算すると、数千万円規模になることは珍しくありません。

さらに現預金、有価証券、生命保険金(非課税枠を超えた分)なども合算されます。基礎控除4,800万円は、自宅一軒でほぼ埋まってしまう水準だと考えておいたほうが安全です。

本当の盲点は、非上場の自社株

そして最大の盲点が、非上場の自社株です。「株なんて売れないのに、なぜ相続財産に入るんですか」と驚かれる社長は多いですが、税務上は評価額に基づいてしっかり相続財産としてカウントされます。

自社株の評価方法は、類似業種比準方式や純資産価額方式など複数あり、会社の業績や純資産の額によって評価額が跳ね上がることがあります。特に、内部留保を厚くしてきた優良企業ほど、自社株の評価額は高くなる傾向があります。

「利益を出して会社を大きくしてきたことが、そのまま相続税の重さに直結する」というのは、経営者にとって皮肉な現実かもしれません。

今からできることは、評価額の把握から

では今、何をすればよいのでしょうか。まず着手すべきは、自社株を含めた財産全体の評価額を把握することです。

評価額が分からなければ、基礎控除を超えているかどうかも、対策が必要かどうかも判断できません。顧問税理士に依頼すれば、概算の評価額は比較的短期間で算出してもらえます。

評価額を把握した上で、生前贈与や納税資金の準備、場合によっては株価対策など、打てる手は複数あります。ただしどの対策が適切かは、会社の状況や家族構成によって大きく異なるため、自己判断は禁物です。

「相続税なんてうちには関係ない」と思っていた社長ほど、実際に試算してみると基礎控除を超えていた、というケースを何度も見てきました。まずは一度、ご自身の会社の自社株評価額を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。