先日、年商1000万円を超えたばかりの社長から、こんな相談を受けました。
「顧問税理士から法人化を勧められたんですが、正直まだ迷っています」
売上が1000万円を超えると、消費税の課税事業者になることもあり、法人化を検討し始める方が増えます。ですが、この規模での法人化には、見落とされがちな落とし穴が2つあります。
社保の壁は、想像より高い
個人事業主のときは国民健康保険と国民年金に加入していたはずです。法人化すると、社長自身も含めて社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になります。
ここで問題になるのが、保険料の負担割合です。国保・国民年金は全額自己負担ですが、社会保険は労使折半。つまり、役員報酬の約15%前後を、会社側も負担する義務が生じます。
役員報酬を月30万円に設定した場合、会社負担分だけで年間50万円前後になることも珍しくありません。利益がまだ薄い段階だと、この負担が資金繰りをじわじわ圧迫します。
「節税のために法人化したのに、社保でキャッシュが減った」という声を、私はこれまで何度も聞いてきました。
赤字でも逃げられない、均等割7万円
もう一つ見落とされがちなのが、法人住民税の均等割です。
個人事業主なら、赤字の年は所得税も住民税もほぼゼロで済みます。ところが法人になると話は別です。赤字であっても、資本金1000万円以下・従業員50人以下の中小企業でも、都道府県民税と市町村民税を合わせて原則年7万円は必ず納める義務があります。
これは「利益に対する課税」ではなく、「法人という器を維持するための固定費」だと考えるとわかりやすいと思います。事業が軌道に乗る前の1〜2年は、この7万円すら重く感じる社長も少なくありません。
では、法人化はいつすべきか
ここまで読むと「法人化は損なのか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。目安になるのは、事業所得(利益)がおおむね800万〜1000万円を安定して超えてくるかどうかです。
このラインを超えてくると、法人税率と所得税・住民税の実効税率の差が逆転し、法人化のメリットが社保負担を上回りやすくなります。逆に、売上1000万円でも経費が多く利益が薄い段階での法人化は、社保と均等割の負担だけが先行してしまうケースが目立ちます。
売上の大きさだけで判断せず、「利益がどれだけ残っているか」「その利益が今後も安定して見込めるか」を基準に考えることをおすすめします。
まだ法人化の時期を決めかねているなら、直近2〜3期分の利益推移を持って、一度税理士に相談してみるのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。