先日、都内でひとり社長として会社を経営されている方から、こんな相談を受けました。「自宅マンションの家賃、経費にできるって聞いたんですが本当ですか」。

結論から言うと、本当です。ただし条件があります。自宅の家賃をまるごと経費にすることはできませんが、業務で使っている部分だけを合理的な基準で切り分ければ、会社の経費として計上できます。これを「家事按分」と呼びます。

家賃10万円のワンルームでも、平日の日中は仕事部屋として使い、夜はプライベート空間として使っているという方は多いはずです。この場合、業務使用分に相当する割合だけを法人側の地代家賃として処理し、残りは個人負担のまま、という整理になります。

「とりあえず50%」が危ない理由

ここでよくある誤解が、按分割合を「なんとなく50%」で決めてしまうことです。切りのいい数字ですし、半分くらい仕事に使っている感覚もあるので、つい選びたくなる割合ではあります。

ですが、按分割合は感覚ではなく、実態を反映した合理的な根拠が必要です。税務調査では「なぜ50%なのか」を必ず聞かれます。この問いに答えられないと、按分自体が否認され、経費として認められていた分がまるごと否認・追徴課税というリスクにつながります。

特にワンルームで生活しながら仕事もしているケースは、税務署から見ても「本当に半分が業務専用スペースなのか」という目で見られやすい部分です。寝室とリビングが一体化した空間で、日中だけ仕事机を置いているという状態であれば、実態は50%よりもっと低い割合になることも珍しくありません。

合理的な按分基準の作り方

では、どうやって按分割合の根拠を作ればよいのでしょうか。代表的な考え方は次の2つです。

1つ目は面積按分です。自宅の総床面積のうち、書斎やワークスペースとして専有している部分の面積を測り、その比率を使う方法です。1LDKで書斎に使っているのが1部屋分だけなら、その部屋の面積÷総面積が按分の目安になります。

2つ目は使用時間按分です。1日のうち何時間を業務に充てているかを基準にする方法で、在宅ワーク中心の業種で使われることがあります。ただし生活と仕事が完全に混在する空間では説明がしづらく、面積按分の方が税務署への説明力は高いと考えられます。

どちらの方法を採る場合でも、間取り図や写真、実際の使用状況を記録として残しておくことが重要です。按分割合の数字だけでなく、「なぜその数字になったか」を後から説明できる資料をセットで用意しておくと、調査が入った際にも慌てずに対応できます。

見落としがちな注意点

家事按分を行う際は、家賃だけでなく水道光熱費や通信費についても同様の考え方が必要です。それぞれ按分の根拠が異なることもあるため、家賃と一緒くたにせず、科目ごとに整理しておくのが望ましいでしょう。

また、法人契約ではなく個人契約のまま社宅扱いにしていないケースでは、そもそも按分の前提となる契約形態自体を見直した方がよい場合もあります。社宅として法人契約に切り替えることで、より高い割合を経費化できる可能性もあるため、按分だけにこだわらず契約形態から検討する価値はあります。

まだ「なんとなく50%」で処理してしまっている方は、今期の決算までに按分根拠を一度整理し直しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。