先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「毎年3月になると急に利益が跳ね上がって、税金の資金繰りに毎回慌てるんです」。話を聞くと、繁忙期がちょうど決算月の直前に来る業種特有の悩みで、対策を打とうにも時間切れになってしまうとのことでした。
実はこの手の悩み、決算期そのものを見直すことで解決できるケースが少なくありません。
決算期は事業年度の途中でも変更できる
意外と知られていませんが、決算期は定款変更と税務署への届出さえ行えば、事業年度の途中であっても変更が可能です。
「今の決算月は創業のタイミングでなんとなく決めた」という会社は珍しくありません。事業の実態に合わせて見直すのは、むしろ自然な経営判断です。
変更の手続きは、株主総会での定款変更決議と、税務署・都道府県・市区町村への異動届出書の提出が基本になります。決してハードルの高い話ではありません。
繁忙期を期首側に寄せるという発想
季節によって利益が大きく偏る会社にとって、決算期の位置はそのまま「対策できる時間」の長さを左右します。
繁忙期が決算直前にあると、大きな利益が見えてから決算日までの猶予がほとんどありません。設備投資や役員報酬の見直しといった打ち手を検討する時間もなく、気づけば税額が確定してしまいます。
一方、繁忙期を期首側に寄せる形で決算月を変更すれば、大きな利益が見えた時点から決算日までに十分な時間が生まれます。その間に、必要な投資判断や経費の計上時期を落ち着いて検討できるようになるわけです。
利益が見えた期を意図的に短く区切る
もうひとつの使い方として、大きな利益が見込まれる時期をあえて短い事業年度で区切るという方法があります。
通常12ヶ月である事業年度を、決算期変更のタイミングで一時的に短縮すれば、その期の利益規模自体を圧縮できます。そのうえで、区切られた新しい期でじっくり対策を検討する時間を確保できるのです。
特に、単年度で突発的に大きな利益が出そうな見込みが早い段階でわかっている会社にとっては、検討の価値がある選択肢だと思います。
消費税の免税判定への影響を忘れずに
ここで注意したいのが、消費税です。
決算期を変更すると事業年度の区切りが変わるため、基準期間や特定期間の考え方にも影響が及びます。特に、これまで免税事業者だった会社が、決算期変更によって思わぬタイミングで課税事業者に切り替わってしまうケースもあります。
決算期変更は、法人税の観点だけで判断するのではなく、消費税を含めた会社全体の税務スケジュールを俯瞰したうえで検討する必要があります。単なる利益の先送りで終わらせず、資金繰りや納税額全体を見渡した設計にすることが肝心です。
決算期の変更は、一度行えば長期間にわたって会社の税務カレンダーそのものを変える意思決定です。まずは自社の利益がどの時期に偏りやすいかを棚卸しして、決算期変更が選択肢になり得るか、税理士と一緒に確認してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。