先日、顧問先の元社長からこんな相談を受けました。「中古のアパートを買ったら、償却費が思ったより大きくてね。これって毎年続くの?」

答えは半分イエス、半分ノーです。中古建物の減価償却は、新築とはまったく別のルールで計算されるからです。この仕組みを知っているかどうかで、同じ物件を買っても節税効果は大きく変わってきます。

なぜ中古建物は償却費が大きくなるのか

減価償却費は「取得価額÷耐用年数」で決まります。分母である耐用年数が短ければ短いほど、1年あたりの償却費は大きくなる仕組みです。

新築の建物なら、法律で定められた「法定耐用年数」をそのまま使います。ところが中古の場合は、すでに使われてきた年数の分だけ、残りの寿命を短く見積もることが認められています。

これが「中古資産の耐用年数の見積り」と呼ばれる制度です。同じ1億円の建物でも、新築なら数十年かけて償却するところを、中古なら数年で償却しきれるケースが出てきます。

法定年数を超えていれば、さらに短くなる

ここがポイントです。法定耐用年数の一部を経過した建物であれば「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」という式で見積もります。

ですが、法定耐用年数をすでに全部使い切っている建物であれば、計算はもっとシンプルになります。法定耐用年数に20%を掛けるだけです。

元社長が「木造だと特に効くのか」と聞いてきたのは、まさにここに理由があります。木造住宅の法定耐用年数は22年。築22年を超えた木造アパートなら、見積耐用年数は22年×20%で4.4年、端数を切り捨てて4年になります。

1億円の木造アパートを4年で償却すると考えれば、単純計算で年間2,500万円の償却費です。所得の圧縮効果がどれほど大きいか、想像がつくのではないでしょうか。

ただし、償却できるのは建物だけ

ここで注意したいのが、土地には減価償却がないという事実です。土地は使っても劣化しないという考え方のもと、税務上は永遠に価値が減らない資産として扱われます。

つまり、物件価格のうち建物と土地をどう按分するかで、償却できる金額そのものが変わってきます。土地の比率が高い物件を買ってしまうと、いくら耐用年数が短くても償却できる母数が小さく、期待したほどの節税効果が出ないことがあります。

購入時の契約書や固定資産税評価額をもとに、建物と土地の按分を合理的な根拠で行っておくことが大切です。ここを曖昧にすると、税務調査で按分方法を問われるリスクもあります。

出口の売却益まで見て判断する

もうひとつ忘れてはいけないのが、売却するときの話です。減価償却を進めれば進めるほど、建物の帳簿上の価値(簿価)は下がっていきます。

簿価が下がった状態で物件を売却すると、売却価格と簿価の差額が譲渡益として課税対象になります。つまり、保有中に節税できた分が、売却時にまとめて課税として跳ね返ってくる可能性があるということです。

特に個人で不動産を所有している場合、所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わります。短期間で売却してしまうと、保有中の節税メリットを売却時の高い税率で相殺してしまうこともあり得ます。

ですから、中古建物による減価償却は「買った瞬間の節税額」だけで判断せず、何年保有して、いつ、いくらで売却する見込みなのかまで含めて投資判断をするのが本筋です。

中古の築古物件は、うまく使えば強力な節税ツールになります。ただし、それは出口戦略とセットで考えたときの話です。物件を検討する際は、耐用年数の見積りと合わせて、保有期間中のキャッシュフローと売却時の税負担までシミュレーションしておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。