先日、製造業を営むある社長から、こんな相談を受けました。「工場の隅に、もう5年以上動かしていない機械があるんです。処分しようか迷っていて」。

話を聞くと、その機械は帳簿価額がまだ200万円ほど残っていました。壊れているわけではないけれど、事業の方向転換で使う予定がなくなった。そんな資産、あなたの会社にも一つや二つ、心当たりがあるのではないでしょうか。

結論から言うと、こうした「使っていないのに帳簿に居座っている資産」は、除却損として損金に落とせる可能性があります。しかも、実際に壊さなくても認められるケースがあるのです。

除却損は「捨てたとき」だけの話ではない

除却損の仕組み自体はシンプルです。固定資産を廃棄すれば、その時点の帳簿価額を除却損として損金に計上できます。加えて、廃棄にかかった処分費用も損金算入の対象になります。

問題は、多くの経営者が「除却損=実際に物理的に壊して捨てる」というイメージしか持っていないことです。工場の解体費用や、廃棄物処理業者への支払いが発生するような大がかりなケースしか思い浮かばない。だからこそ、動かなくなった機械を「まだ資産としてあるから」と放置してしまいます。

しかし税務上は、もう一つの選択肢が用意されています。

壊さなくても認められる「有姿除却」

それが有姿除却と呼ばれる方法です。物理的にスクラップにしなくても、その資産を今後二度と事業で使用しないことが明らかであれば、除却損の計上が認められる場合があります。

たとえば、生産ラインを新型設備に切り替えて、旧型の機械は稼働の見込みがまったくない。倉庫の奥にしまい込んだまま、再稼働の計画もない。こうした状態であれば、物理的に処分していなくても損金算入の対象になり得るのです。

冒頭の社長のケースも、まさにこれに該当しました。機械は物理的にはそこにありましたが、事業内容の変更で二度と使う見込みがないことが明確だったからです。

認められるためには「説明できる状態」が必要

ただし、有姿除却は「使っていないから」というだけで無条件に認められるものではありません。税務調査で確認された際に、合理的に説明できる状態を整えておく必要があります。

具体的には、次のような点を押さえておくと安心です。

  • その資産を今後使用しない理由(生産方式の変更、事業縮小など)を書面で残しておく
  • 再利用や転用の予定がないことを社内の稟議や議事録で確認できるようにしておく
  • 可能であれば写真など、現状を記録しておく

「なんとなく使っていない」という曖昧な状態のまま除却損を計上すると、税務調査で否認されるリスクが残ります。逆に言えば、使わない理由を筋道立てて説明できれば、決算の選択肢として十分に検討する価値があります。

決算前に一度、資産台帳を見直す価値

固定資産台帳には、稼働の実態が反映されないまま何年も帳簿価額が残り続けている資産が、意外と多く眠っています。減価償却が終わっていない資産をそのままにしておくのは、単に税負担を先送りしているだけとも言えます。

決算が近づいてきたら、一度資産台帳を見直して、「これ、もう使っていないな」という設備がないか確認してみてください。実際に処分できるものは処分損として、処分が難しいものは有姿除却の要件を満たせないか検討する。それだけで、決算対策の選択肢が一つ増えます。

まだ資産台帳を数年見直していないなら、この決算期を機に一度棚卸ししてみるのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。