先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。半年前に思い切って業務システムを刷新したところ、決算のタイミングで顧問税理士から「これは一度に経費にはなりませんよ」と言われ、頭が真っ白になったそうです。

「数百万円払ったのに、今期の利益から全部引けないのか」と。気持ちはよくわかります。ですが、これは制度を知らなかっただけの話で、慌てる必要はありません。

ソフトウェアは「モノ」ではなく資産として扱われる

結論から言うと、業務用に導入したソフトウェアは無形固定資産に分類され、原則として5年かけて償却していくことになっています。

パソコンや車両のような目に見える固定資産と同じ発想です。効果が長期間にわたって続くものは、購入した年に一気に費用計上せず、使う期間に応じて少しずつ経費化する。これが減価償却の基本的な考え方です。

自社の業務のために使うソフトウェアであれば、耐用年数は5年と定められています。導入費用が300万円なら、単純計算で毎年60万円ずつを5年間にわたって経費にしていくイメージです。

一括で処理してしまうと、税務調査で指摘を受けて追徴課税につながるリスクもあります。「払った年に全部経費」という感覚のまま処理してしまう社長は、実は少なくありません。

金額次第で扱いがガラリと変わる

ここで朗報もあります。すべてのソフトウェアが5年償却の対象になるわけではなく、金額によって扱いが大きく変わってきます。

取得価額が10万円未満のものであれば、少額減価償却資産として購入した年に一括で経費にできます。クラウド会計ソフトの年間利用料や、簡易な業務ツールなどはこのラインに収まることが多いでしょう。

さらに中小企業であれば、30万円未満のソフトウェアについて、中小企業者等の少額減価償却資産の特例を使うことで、その年のうちに全額を即時償却できる制度もあります。年間300万円までという上限はありますが、この特例をうまく使えば、決算対策として利益を圧縮する選択肢が広がります。

逆に言えば、30万円を超える金額のシステム導入は、原則どおり5年かけてじっくり償却していく前提で資金計画を立てておく必要があるということです。導入直後にキャッシュは出ていくのに、経費化は数年に分散する。このズレを理解していないと、思わぬ資金繰りの誤算につながります。

導入前の「区分の確認」がすべてを左右する

重要なのは、システムを契約してしまってから慌てて調べるのではなく、導入前の見積もり段階で「このソフトウェアはいくらで、どの区分に当てはまるのか」を押さえておくことです。

特に、複数の機能をパッケージで購入する場合や、初期費用と月額費用が混在する契約の場合、取得価額の計算方法によって10万円未満か30万円未満かの境目をまたいでしまうことがあります。境目一つで一括経費にできるかどうかが変わってくるわけですから、契約前に見積書を持って税理士に相談する価値は十分にあります。

まだ業務システムの導入を検討している段階なら、契約書にサインする前に一度、経費の区分について確認しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。