先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。

「決算のたびに利益が上下するのは、売上や経費のせいだと思っていた。でも顧問税理士に『御社は棚卸資産、何法で評価してますか』と聞かれて、答えられなかったんです」

実はこの棚卸資産の評価方法、選び方ひとつで期末の在庫評価額が変わり、結果として利益と納税額まで動きます。仕入価格が安定している会社にはピンとこない話ですが、原材料や商品の仕入単価が期中に上下する業種ほど、無視できない差になります。

評価方法によって在庫の値段が変わる

代表的な方法は3つあります。

最終仕入原価法は、期末にいちばん近い時期の仕入単価で在庫全体を評価する方法です。計算がシンプルで、届出をしていない会社は自動的にこの方法になります。

総平均法は、期中に仕入れた金額の合計を仕入数量で割り、平均単価で評価する方法です。価格変動の影響がならされるため、評価額が極端に振れにくくなります。

先入先出法は、古い仕入から先に出ていくと仮定し、期末に残っているのは比較的新しい単価の在庫だとみなす方法です。

仮に原材料の仕入単価が期首の1,000円から期末にかけて1,500円まで上がっていったとします。この場合、先入先出法では期末在庫の評価額が高めに出やすく、売上原価が相対的に下がるため、利益は上振れしやすくなります。逆に最終仕入原価法は、期末直前の単価がそのまま評価額に直結するので、価格が急騰・急落した局面では実態と評価額にズレが出やすい方法です。

好きに選べるが、コロコロ変えられない

「じゃあ利益が出そうな期は、有利な方法に変えればいいのでは」と考える社長もいますが、そう単純ではありません。

評価方法は税務署への届出をすれば選択できますが、いったん選んだ方法は継続して使うことが前提になっています。恣意的に期ごとに変更して利益を調整するようなことは想定されておらず、変更には改めて手続きが必要です。

つまり大事なのは、事業を始めるタイミングや、評価方法を見直すタイミングで、自社の仕入の値動きの傾向に合った方法を選んでおくことです。仕入価格が比較的安定している会社であれば、どの方法でも大きな差は出ません。一方、原材料価格の変動が激しい業種、たとえば輸入原材料を使う製造業や、相場の影響を受けやすい商社的なビジネスでは、この選択が数年単位でボディブローのように利益に効いてきます。

まずは自社がどの方法かを確認する

多くの中小企業は、特に届出をしていないために最終仕入原価法がデフォルトで適用されています。それ自体が悪いわけではありませんが、「自社がどの方法を使っているか」を把握していない社長は意外と多いものです。

まずは顧問税理士に、自社の棚卸資産評価方法と、それが自社の仕入パターンに合っているかを確認してみることをおすすめします。決算数値の見え方が変わるだけでなく、今後の資金繰り計画の精度にも関わってくる話です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。