先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「社員が結婚したのでご祝儀を渡したいんですが、これは会社の経費にできますか」。答えは、条件を満たせば「できます」です。
慶弔見舞金というと、結婚祝いや出産祝い、香典やお見舞金といったものを指します。これらは福利厚生費として損金に算入できる項目のひとつです。ただし、税務署が納得する形で処理しないと、思わぬ形で否認されることがあります。特にひとり社長や役員数名の小さな会社ほど、なあなあの運用になりやすく、あとから指摘を受けやすい項目でもあります。
社会通念上相当な金額であること
まず大前提として、金額が「社会通念上相当」であることが求められます。結婚祝いなら3万円前後、出産祝いなら1〜2万円、香典なら5千円〜1万円程度が一般的な相場とされています。
この相場から大きく外れた金額を支給すると、福利厚生費ではなく給与とみなされ、所得税の源泉徴収漏れを指摘されるリスクが出てきます。会社としては経費のつもりでも、税務署からは「特定の社員への実質的な給与」と見られてしまうわけです。
慶弔規程を作り、全社員に同じ基準で支給する
もうひとつ重要なのが、慶弔規程を整備しておくことです。規程には、どんな事由でいくら支給するのかを明記し、役員も含めて全社員に同じ基準を適用する必要があります。
規程がないまま、その場の判断で金額を決めて支給していると、税務調査で「なぜこの社員だけこの金額なのか」と説明を求められたときに困ります。逆に規程さえきちんとしていれば、担当者が変わっても一貫した運用ができ、税務署への説明もスムーズです。
社労士や税理士に相談しながら、慶弔規程のひな形を自社の実情に合わせて調整するのがおすすめです。すでに規程がある会社でも、金額の相場は数年単位で見直しておくと安心です。
金額が過大だと給与課税の恐れがある
規程があっても、金額の設定を誤ると意味がありません。たとえば結婚祝いを社長だけ50万円、一般社員は3万円というように差をつけてしまうと、社長への支給分は給与とみなされる可能性が高くなります。
慶弔見舞金はあくまで福利厚生の一環であり、役職による差をつけすぎないことが安全な運用のポイントです。差をつけるとしても、勤続年数など客観的な基準に基づく合理的な範囲にとどめておくべきでしょう。
また、香典や見舞金を支給した際は、会葬礼状のコピーや診断書など、支給の根拠となる資料を残しておくことも忘れないようにしてください。証憑がなければ、規程があっても否認されるおそれがあります。
まだ慶弔規程を作っていない会社は、決算期の節目にでも整備しておくと、いざというときに慌てずに済みます。社員への福利厚生を手厚くしながら、税務上のリスクもきちんと抑えておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。