「今年こそ社員旅行をやりたいんですが、経費になりますよね?」
こんな相談を受けることが増えてきました。特に採用強化に力を入れている会社の社長さんから多い印象です。コロナ禍で自粛していた分、そろそろ…という気持ちも理解できます。
結論から言うと、条件を満たせば全額損金にできます。20人の会社で1人10万円の旅行なら、200万円が経費になる計算です。法人税率約30%なら、60万円のキャッシュが手元に残る。これは見逃せない節税チャンスです。
ただし、条件を一つでも外すと全額が「給与扱い」になり、社員に所得税まで発生します。喜ばせようとした旅行が、逆に社員の手取りを減らしてしまう――そんな事態は絶対に避けたいですよね。
税務署が見る4つの条件
社員旅行が福利厚生費として認められるには、以下の4点をすべて満たす必要があります。
① 全社員の50%以上が参加する
一部の特定メンバーだけを連れていく旅行は、会社の行事ではなく「特定社員へのご褒美」と見なされます。最低でも全体の半数以上が参加していることが大前提です。
② 旅行期間は4泊5日以内
国内・海外を問わず、この日数を超えると原則として経費と認められません。ハワイやヨーロッパなど長距離の海外旅行を検討する場合は、日程設計の段階から注意が必要です。
③ 1人あたりの費用が常識的な金額(目安10万円以下)
法令に明確な上限額の定めはありませんが、1人10万円を超えてくると税務署から「高額すぎる」とチェックが入りやすくなります。旅行内容と金額のバランスが問われます。
④ 全社員に参加の機会がある
シフト制の職場など、全員が同じ日程に揃わないケースもあるでしょう。それでも「行きたかったのに行けなかった」という状況を作らないことが大切です。代替日程を設けるなど、機会の公平性を担保する工夫も有効です。
やりがちなNG例
役員だけで行く旅行は、まず経費になりません。「経営合宿」と称しても、実態が観光であれば同じ扱いです。「社員旅行」という名目だけで判断されるわけではなく、参加者の構成と実態がセットで見られます。
家族同伴のケースも要注意です。配偶者や子どもを連れていく場合、その分の費用を会社が負担すると、役員・社員への給与とみなされます。「せっかくだから家族も」という気持ちはよくわかりますが、家族分は個人負担にするのが鉄則です。
なお、海外旅行の場合、4泊5日の日数カウントには「機中泊」も含まれます。往復で1泊ずつ取られると実質3泊しか現地に滞在できない計算になることもあるので、スケジュールを組む際には確認しておきましょう。
具体的な節税効果を試算すると
少し数字で整理してみます。
- 参加人数:20名
- 1人あたり費用:8万円
- 合計:160万円
これが全額損金になれば、法人税率30%で48万円の節税です。旅行費用の3割近くが税負担の軽減として戻ってくるイメージです。社員のモチベーションを上げながら節税もできる、一石二鳥の施策といえます。
事前準備と記録保管が鍵
社員旅行を経費計上するなら、記録の整備も欠かせません。参加・不参加の確認書を全社員から取ること、旅行会社への領収書と参加者リストをセットで保管することを習慣にしてください。「旅行の目的」「参加人数の確認プロセス」まで文書化しておくと、万が一の税務調査にも対応しやすくなります。
今期の決算前に社員旅行を検討しているなら、まず4条件をチェックして、顧問税理士に一報入れておくことをおすすめします。条件さえ整えれば、社員に喜ばれながら合法的に節税できる、数少ない手段のひとつです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。