先日、ある社長からこんな相談を受けました。「今期、社員への感謝を込めて温泉旅行を企画したんですが、これって経費になるんですか?」と。
答えは「条件次第で全額なります」です。ただし、何も考えずに旅行の領収書を経費に突っ込むのはかなり危険。条件を外すと、参加した社員全員に所得税がかかるという最悪のパターンになります。
今回は、税務署が「これは福利厚生費として認める」と判断する4つの条件を整理しました。
税務署が見ている4つのポイント
まず結論から。社員旅行が福利厚生費として損金に算入されるためには、次の4つをすべて満たす必要があります。
① 全社員の50%以上が参加していること
一部の社員だけが参加する旅行は「特定の人への利益供与」とみなされます。社員が20人いれば、最低でも11人以上が参加している必要があります。
② 旅行期間が4泊5日以内であること
これは国内・海外問わず適用されます。5泊6日のハワイ旅行を豪華に企画しても、税務上は認められません。4泊5日が上限です。
③ 1人あたりの費用が10万円以下であること
「常識的な金額」という基準です。10万円を超えると、超過分が給与扱いになるリスクが高まります。交通費・宿泊費・食事代などを合算した金額で判断します。
④ 全社員に参加の機会が平等に与えられていること
「参加したくても声すらかけてもらえなかった」という社員がいてはNGです。業務都合などでやむを得ず欠席した場合は問題ありませんが、最初から声をかけない設計はアウトです。
条件を満たすと、どれくらい節税できる?
具体的な数字で見てみましょう。社員20人の会社で、1人あたり10万円の社員旅行を実施した場合、旅行費用の合計は200万円です。
これが全額損金になれば、法人税率30%として計算すると、60万円の節税効果があります。旅行を楽しみながら60万円が手元に残る計算です。
逆に条件を外してしまうと、200万円が社員への給与とみなされます。会社側は追加の社会保険料負担が発生し、社員側には所得税・住民税が課税される。社員への還元のつもりが、かえって迷惑をかけてしまうことになりかねません。
やってはいけない2つのパターン
社員旅行でよくある失敗が2つあります。
ひとつ目は役員だけの旅行。「幹部で慰労旅行に行った」というケースですが、一般社員が参加していない旅行は福利厚生費として認められません。役員報酬の変形として給与課税される可能性が高いです。
ふたつ目は家族同伴分を会社が負担するケース。社員本人の費用は福利厚生費でも、家族の宿泊費や食事代を会社が出すと、その分は社員への給与とみなされます。家族同伴を認める場合は、家族分の費用は本人負担とするのが基本です。
旅行の記録もしっかり残す
税務調査で社員旅行の経費が問われたとき、「参加者名簿」「旅程表」「領収書の明細」が揃っていると話が早いです。特に「全社員の50%以上が参加していた」という事実は、参加者リストがないと証明できません。
旅行後に総務や経理がまとめて記録を残しておく習慣をつけておくと、いざというときに慌てずに済みます。
社員旅行は、正しく設計すれば節税しながら社員のモチベーションも上げられる、コスパの高い施策です。「今期は社員を労いたい」と考えている社長は、4つの条件を頭に入れた上で企画してみてください。顧問税理士に事前に相談しておくと、より安心です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。