先日、製造業を営むある社長からこんな相談を受けました。

「型落ちした在庫を大量に抱えていてね。もう安くしか売れないのに、決算では帳簿上の金額のままで税金がかかってしまう」

倉庫の隅で埃をかぶっている在庫を見るたびにため息が出る、という話でした。実はこうした在庫、条件さえ満たせば「評価損」として損金に計上できます。今日はその条件と、実務でつまずきやすいポイントを整理してみます。

棚卸資産は時価まで評価損を計上できる

会社が持つ商品や製品などの棚卸資産は、原則として取得したときの原価で帳簿に計上されています。

ところが、災害による損傷や著しい陳腐化など、一定の事実があった場合には、期末の時価まで帳簿価額を切り下げて、その差額を損金に算入することが認められています。これが棚卸資産の評価損です。

たとえば原価100万円の商品が、陳腐化によって時価30万円まで下がっているなら、差額の70万円を損金にできるということです。売れないまま資産として残り続け、そこに税金だけがのしかかる状態を避けられるわけです。

「単に売れない」だけでは認められない

ここで多くの社長が誤解しがちなのが、値下がりの理由です。

税務上、評価損が認められるのは、災害による著しい損傷、著しい陳腐化、破損・型崩れ・品質変化といった、資産そのものに起きた具体的な事実がある場合に限られます。

逆に、物価変動や過剰生産、単純な流行遅れによる値下がりは、評価損の対象として認められません。市場環境の変化はどの会社にも起こり得るものであり、それだけで損金算入を認めてしまうと恣意的な利益調整の温床になってしまうからです。

「型落ちで売れない」という状況は、一見すると陳腐化のように思えます。しかし税務調査で問われるのは、なぜ売れないのかという中身です。単に型が古くなっただけなのか、それとも品質が実質的に劣化し、通常の方法では販売できない状態になっているのか。ここの区別が評価損の可否を分けます。

陳腐化・品質低下の証拠をどう残すか

評価損を計上する際にもっとも重要なのは、下がった事実を客観的に示す証拠です。

具体的には、次のような資料を揃えておくと説得力が増します。

  • いつからその商品が動いていないか分かる在庫回転データ
  • 型落ちや品質低下の状態が分かる写真
  • 処分価格や見積書など、時価を示す資料
  • 社内での廃棄・値引き販売の決裁記録

こうした裏付けがないまま「もう売れないから」という理由だけで評価損を計上すると、税務調査で否認されるリスクが高くなります。否認された場合、追徴課税に加えて過少申告加算税もかかってきますので、決算直前に慌てて処理するのではなく、期中から在庫の状態を記録しておくことが望ましいでしょう。

在庫を抱えている会社は、決算前に一度、動きの悪い商品を棚卸ししてみることをおすすめします。ただ古いというだけでなく、品質や機能面でどう劣化しているかを言語化できれば、評価損として計上できる可能性が見えてきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。