先日、ある社長からこんな質問を受けました。「うちが取りこぼしていた経費は、いったい何だったんだろう」。決算が終わってから聞かれても遅いのですが、実はこの手の見落としは驚くほど多くの会社で起きています。

多くの社長が落とし忘れている経費や控除は、実は身近なところに転がっています。今回は、特に見落とされがちな3つのポイントを、会社側と個人側の両方から整理してみます。

自宅兼事務所の家賃・光熱費、按分していますか

自宅の一部を仕事に使っている社長は少なくありません。それなのに、家賃や光熱費をまったく経費にしていないケースをよく見かけます。

仕事で使っている部屋の床面積や、実際に業務に充てている時間の割合で按分すれば、家賃や電気代の一部は堂々と経費にできます。たとえば自宅の25%を仕事のスペースとして使っているなら、家賃の25%を目安に計上する、という考え方です。

ここで大事なのは、按分の根拠を数字で残しておくことです。「なんとなく3割」ではなく、部屋の面積を測ってメモしておくだけで、説明力がまったく違ってきます。税務調査で聞かれたときに、その場で根拠を示せるかどうかは大きな差になります。

携帯・ネット代も「事業割合」で経費にできる

家賃と同じ発想が、携帯電話代やインターネット回線費にも当てはまります。プライベートと仕事の両方で使っているスマホの料金を、全額プライベート扱いにしていないでしょうか。

業務での使用割合を大まかにでも算出し、その割合分を経費に計上する。ここでのポイントは「大まかにでも」という部分で、完璧な数字を出す必要はありません。通話履歴やアプリの利用時間など、何かしら合理的な根拠があれば十分成立します。

毎月数千円の話に見えても、1年間積み重なれば決して小さくない金額になります。しかも一度按分の基準を決めてしまえば、翌年以降は同じルールを使い回せるので、手間はほとんどかかりません。

小規模企業共済は「経費」ではなく「控除」

ここで少し整理が必要な項目があります。小規模企業共済の掛金です。

先ほどの相談でも、社長は「共済は経費じゃなく控除だったな」と自分で気づかれていました。その通りで、小規模企業共済の掛金は会社の経費にはなりません。あくまで社長個人の所得から差し引かれる「所得控除」です。

会社の決算書には出てこない項目だからこそ、経理担当者や税理士との会話で話題に上がりにくく、結果として掛金を設定していない、あるいは上限まで使い切れていない社長が意外と多いのが実情です。掛金は月最大7万円、年間で最大84万円まで所得控除の対象にできます。将来の退職金代わりにもなる制度なので、単なる節税以上のメリットがあります。

見落としの厄介なところは、経費と控除では効いてくる場所が違うという点です。会社の経費を見直すだけでは、この84万円分の控除は絶対に見つかりません。

会社と個人、両方の目線でチェックする

ここまで見てきた3つに共通するのは、「会社の経費」と「社長個人の所得控除」を、別々の頭で確認する必要があるということです。決算書だけを眺めていても、個人の所得控除の取りこぼしには気づけません。

家賃や通信費のように会社の経費として計上できるものと、小規模企業共済のように個人の確定申告や年末調整で反映すべきものを、それぞれのタイミングで確認する習慣をつけることが、取りこぼしを防ぐ一番の近道です。

まだ按分のルールを決めていない、あるいは小規模企業共済の掛金を見直していないなら、次の決算・確定申告に向けて一度整理しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。