先日、創業12年になる建設会社の社長とお話しする機会がありました。従業員には退職金制度を用意しているのに、自分自身の退職金は「利益が出たら会社に残しておけばいい」と後回しにしていたそうです。決算書を見せてもらうと、個人の所得税率はすでに高い水準に達していました。

こういう社長にこそ、まず検討してほしいのが小規模企業共済です。

掛金が全額、所得控除になる

小規模企業共済は、社長や個人事業主が自分の退職金を自分で積み立てる制度です。掛金は月1,000円から70,000円までの範囲で、500円刻みで自由に設定できます。

ここで重要なのは、支払った掛金が全額、その年の所得控除になるという点です。保険や共済にはさまざまな種類がありますが、支払額の一部しか控除できないものが多い中、全額控除はかなり有利な部類に入ります。

仮に毎月70,000円、年間84万円を掛けた場合、課税所得がその分そのまま圧縮されます。所得税率が高い社長ほど、この圧縮効果は大きくなります。まず個人の所得税を下げたい、という社長にとっての入口になる制度だと考えてください。

受け取るときも税負担が抑えられる

積み立てたお金は、廃業や退職のタイミングで受け取ることになります。ここでも税制上の優遇があり、一括で受け取れば退職所得として、分割で受け取れば公的年金等の雑所得として扱われます。

どちらも給与所得などに比べて税負担が軽くなる仕組みです。積み立てる時も、受け取る時も税金面で有利という、二段構えの制度になっているわけです。

加入前に確認しておきたいこと

いいことずくめに見える制度ですが、いくつか事前に確認しておくべき点があります。

  • 加入できるのは常時使用する従業員が一定数以下の会社や個人事業主に限られます。事業規模によっては加入資格を満たさないケースもあります
  • 受取方法(一括・分割・併用)によって税務上の扱いが変わるため、退職のタイミングで慌てないよう早めにシミュレーションしておくことをおすすめします
  • 加入後20年未満で任意解約すると、受け取れる金額が掛金合計を下回ることがあります。短期でやめる前提での加入は避けた方が無難です

節税効果だけを見て飛びつくのではなく、自分の会社が加入枠に入っているか、将来どう受け取りたいかまで含めて確認しておくと、後から後悔しません。

退職金制度を持たない社長は、まずこの小規模企業共済から検討してみてください。掛金の上限まで一気に埋める必要はなく、月1万円からでも所得控除の効果は実感できるはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。