先日、ある卸売業の社長からこんな相談を受けました。「税務調査が入ったのですが、後日、取引先から『御社、調査入ってるんですか?』と聞かれてしまって……」。

調査官は自社にしか来ないと思っていたのに、いつの間にか取引先にまで話が伝わっていた。社長はその事実に、追徴税額以上にショックを受けていました。

反面調査とは何か

税務調査には、自社の帳簿や証憑を確認する通常の調査のほかに、「反面調査」と呼ばれるものがあります。

自社の資料だけでは取引の実態が確認できないとき、調査官が取引先や銀行に直接足を運び、事実確認を行う手続きです。ある税務署OBの方はこう説明します。「帳簿や証憑で確認できない時は、取引先や銀行に事実確認へ行きます。これが反面調査です」。

つまり反面調査は、自社の説明や書類だけでは調査官を納得させられなかった場合に発動する、いわば“次の一手”なのです。

なぜ取引先にバレてしまうのか

反面調査は、税務署の職員が取引先の会社を直接訪問して行われます。取引先の経理担当者や社長からすれば、いきなり税務署の人間が来て「御社と◯◯社との取引について教えてください」と聞かれるわけです。

ここで当然、こんな疑問が浮かびます。「あの会社、何か調査を受けているのだろうか」。

悪いことをしていなくても、取引先に「調査対象になっている会社」というイメージがついてしまう。これが信用面での実害です。特に金融機関を通じた反面調査は、今後の融資審査にも影を落としかねません。

調査官も好んで反面調査はしない

意外に思われるかもしれませんが、調査官の側も反面調査を乱発したいわけではありません。前出の税務署OBも「信用への影響は大きい。だから我々も乱発はしません」と話します。

手間もかかりますし、取引先との関係にまで波紋を広げる手続きだからこそ、最後の手段として使われる傾向にあります。

裏を返せば、反面調査に至るケースというのは「資料が出てこない会社」に限られるということです。請求書、契約書、納品書といった一次資料が揃っていて、調査官の質問にその場で答えられる会社であれば、わざわざ取引先まで出向く必要はないのです。

書類の整備は「信用を守る盾」になる

ここまでの話をまとめると、反面調査を防ぐ方法はシンプルです。

  • 請求書・契約書・見積書を取引先ごとに整理して保管する
  • 入出金と証憑の対応関係がすぐ説明できる状態にしておく
  • 現金取引や口頭契約が多い取引先については、特に記録を残す

年商が大きくなるほど、取引先の数も増え、書類の管理は煩雑になりがちです。しかし、証憑が整っているというだけで「この会社は資料で答えられる」という印象を調査官に与えられます。これは節税云々の前に、会社の信用そのものを守る備えです。

まだ請求書や契約書の保管ルールが曖昧なままなら、次の決算までに一度、取引先ごとにファイリングを見直しておくのがおすすめです。反面調査という言葉を、他人事にしておく価値は十分にあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。