先日、都内で小さな居酒屋を3店舗経営している社長から、こんな相談を受けました。

「同業の知り合いの店に、朝いきなり税務署が来たらしいんです。うちも突然来られたらどうしよう」

結論から言うと、税務調査は本来「事前通知」が原則です。しかし、業種によっては通知なしでいきなり調査官が現れることがあります。今日はその理由と、備え方についてお話しします。

税務調査は「事前通知」が原則

国税通則法上、税務調査を行う際は納税者にあらかじめ日程を連絡することになっています。多くの会社が経験する調査は、税理士を通じて「〇月〇日にお伺いします」と1〜2週間前に連絡が来るパターンです。

これは調査を受ける側にも心の準備と資料の準備をする時間を与えるためのルールで、突然踏み込まれるようなイメージとは違います。

ある税務署OBの方に聞いた話では、この原則は今もほとんど変わっていないそうです。ただし、例外があります。

なぜ無予告調査があるのか

例外が発生するのは、「事前に通知すると、証拠が隠されたり改ざんされたりするおそれがある」と税務署が判断した場合です。

典型的なのが現金商売です。飲食店、美容室、小売店など、日々の売上の多くが現金で動く業種は、帳簿と実際の現金の流れが一致しているかどうかを、その場で確認しないと意味がないケースがあります。

事前に連絡してしまうと、レジの記録を後から調整したり、現金残高を合わせたりする時間を与えてしまう。だからこそ、こうした業種に限っては無予告での調査が起こり得るわけです。

逆に言えば、取引の大半が銀行振込で記録が残る業種、例えばBtoBのサービス業や製造業などは、無予告調査の対象になることはほとんどありません。証拠を消しようがないからです。

実際の調査はこう行われる

無予告調査が入る場合、多くは開店準備の時間帯、つまり店がまだ営業を始める前の朝に調査官が訪れます。

そこでまず行われるのが、その日の朝時点でのレジの現金残高と、レジの記録(伝票や打刻データ)を突き合わせる作業です。前日までの売上が正しく記帳されているか、現金が帳簿の数字と一致しているかを、その場でチェックされます。

この瞬間に帳簿と現金が合っていなければ、「日々の管理がずさんなのでは」「売上を除外しているのでは」という疑いの目を向けられるきっかけになってしまいます。

一番の対策は「毎日の当たり前」を積み重ねること

特別な対策を用意する必要はありません。大切なのは、日々のレジ締めと現金の実査を習慣として徹底することです。

閉店後にレジの中身を数え、その日の売上記録と一致しているかを毎日確認する。差額が出たら、その日のうちに原因を突き止めて記録に残す。この積み重ねさえできていれば、突然調査官が来ても慌てる必要はありません。

逆に言えば、月末や決算前にまとめて帳尻を合わせるような運用をしている会社ほど、無予告調査で綻びが出やすいということでもあります。

現金商売を営んでいる社長にとって、レジ締めは単なる日次業務ではなく、税務リスクを日々消し込んでいく作業だと捉え直してみると、見え方が変わってくるはずです。

もし「うちは現金商売だけど、レジ締めが日によって担当者任せになっている」と思い当たるなら、今日からでもチェック体制を見直しておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。