決算書を作るとき、「これ何費にすればいいんだろう」と迷った支出を、とりあえず雑費に放り込んでいませんか。
実はその癖、税務調査官からすると格好の的なんです。
先日、税務署OBの方とお話しする機会があったのですが、「決算書で最初に目が行く科目はどこですか」と聞いたところ、迷わず「雑費です」という答えが返ってきました。
理由はシンプルです。雑費は中身が見えない科目だからです。消耗品費なら「ああ、文房具やティッシュだろう」と想像がつきますし、支払手数料なら「銀行手数料か振込手数料か」と当たりがつきます。ところが雑費と書かれた瞬間、そこに何が入っているのか外からはまったく分かりません。
調査官の立場に立てば、中身の見えない箱ほど開けてみたくなるのは当然です。金額が大きい雑費は「何か隠したいものがあるのでは」という仮説のスタートラインになってしまうのです。
雑費が売上の1%を超えたら要注意
具体的な目安として、雑費が売上の1%を超えていると、調査で内訳の説明を求められる可能性がぐっと高まります。
売上5億円の会社なら500万円、売上1億円の会社なら100万円が一つのラインということになります。もちろんこれは絶対的な基準ではありませんが、調査官の経験則として意識されている数字だと考えられます。
そもそも雑費という科目は、本来「他のどの科目にも当てはまらない、少額の支出」だけを入れるためのものです。1回数千円程度の、性質を分類するほどでもない細かい出費の受け皿という位置づけです。
それなのに、経理の現場では「よく分からないからとりあえず雑費」「面倒だから雑費」という運用がまかり通りがちです。忙しい決算期にはなおさら、科目選びは後回しにされやすい作業です。
ですが、その「とりあえず」の積み重ねが、決算書全体の信頼度を下げてしまっているとしたらもったいない話です。
正しい科目に振り分けるだけで印象は変わる
対策は難しいことではありません。雑費に入れていた支出を、本来あるべき科目に振り分け直すだけです。
例えば、コピー用紙やインク代なら消耗品費、振込手数料や信用調査費用なら支払手数料、社員研修の受講料なら研修費といった具合です。こうして中身を明確にしていくと、雑費の残高は自然と小さくなっていきます。
結果として、決算書を見る側からすれば「この会社はきちんと経理を管理している」という印象につながります。金融機関の融資審査でも、雑費が異常に大きい決算書は評価が下がりやすいと言われますから、税務調査対策だけでなく資金調達の面でもプラスに働きます。
もちろん、性質の異なる小口の支出を無理やり細かく分ける必要はありません。あくまで「明らかに他の科目に当てはまるのに雑費に入れている」ものを拾い出す作業です。多くの場合、決算の総勘定元帰を見直すだけで、雑費の半分近くが他の科目に移せることも珍しくありません。
税務調査というと、売上除外や経費の水増しといった派手な論点をイメージしがちですが、実際にはこうした地味な科目選びの精度が、調査官の心証を左右しています。科目を正しく整理することは、立派な税務対策のひとつなのです。
もし顧問税理士から決算書を受け取ったら、一度雑費の金額と売上に占める割合を確認してみてください。もし気になる水準であれば、来期の経理担当者と「雑費の使い方」について一度すり合わせておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。