先日、廃業を控えたある元社長からこんな話を聞きました。
「経営セーフティ共済って、もっと早く知っていれば良かった」
何十年も会社を経営してきた方が、たたむ段階になって初めてこの制度の存在を知ったというのです。話を聞くほど、もったいないと感じました。
「倒産保険」だと思っていた
この社長は、経営セーフティ共済のことを漠然と「取引先が倒産したときのための保険」だと認識していたそうです。
実際、正式名称は「中小企業倒産防止共済」といい、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度として作られました。ここまでは間違っていません。
ですが、実務上のうまみはむしろ節税効果にあります。掛金がそっくりそのまま損金になるからです。
掛金は月20万円まで、全額損金
経営セーフティ共済は、月5,000円から20万円まで、5,000円刻みで掛金を自由に設定できます。上限まで積み立てると年間240万円です。
この掛金は、法人であれば全額を損金に算入できます。個人事業主であれば必要経費です。決算前に利益が想定より出そうだとわかったとき、掛金を増額して駆け込みで損金を積み増す、という使い方をしている会社も少なくありません。
積み立てられる上限は累計800万円まで。年240万円ペースなら、単純計算で3年4ヶ月ほどで上限に達します。
利益が出ている年ほど恩恵が大きく、赤字の年は無理に積み立てる必要がない、という調整のしやすさも実務で重宝される理由の一つです。
40ヶ月以上で掛金全額が戻る
倒産防止共済という名前から、掛け捨ての保険のようなイメージを持つ経営者は少なくありません。ですが実際には、40ヶ月(3年4ヶ月)以上加入してから解約すれば、掛金の100%が戻ってきます。
40ヶ月に満たない段階での解約は、掛金の一部しか戻らない減額返戻となる点には注意が必要です。12ヶ月未満での解約は掛け捨てになります。
つまり短期の資金繰り目的で出し入れする制度ではなく、ある程度の期間を見込んで加入する制度だということです。
出口で税金が戻ってくるわけではない
ここが最も見落とされやすいポイントです。解約して戻ってきたお金は、益金として法人税の課税対象になります。
掛金を積み立てた年に節税できたとしても、解約した年にまとまった利益が計上され、そのぶん税負担が発生する。制度自体が税金を減らしてくれるのではなく、あくまで課税のタイミングを先送りしているにすぎない、と捉えるのが正確です。
だからこそ、加入するときから「いつ、どういう状況で解約するか」まで含めて設計しておく必要があります。よくあるのが、大規模修繕や設備投資、退職金の支給など、まとまった損金が発生するタイミングに解約時期を合わせる方法です。解約益と損金がぶつかることで、税負担の増加を抑えられます。
逆に言えば、出口の計画がないまま加入すると、冒頭の元社長のように「掛けていたことは良かったが、戻ってきたときの税金をどうすればいいかわからない」という状態に陥りかねません。
まだ入っていない社長へ
経営セーフティ共済は、単なる保険でも、単なる節税商品でもありません。掛金の損金算入と、将来の解約タイミングをセットで設計して初めて価値を発揮する制度です。
まだ加入していないなら、今期の決算を待たずに検討を始めてみてください。そして既に加入しているなら、40ヶ月ルールと出口のタイミングを一度整理しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。