先日、決算2ヶ月前にあるクライアントから電話が来ました。「今期、思ったより利益が出そうで……何か手が打てますか?」年商3億円の建設業の社長です。
こういったご相談、決算前になると毎年必ずいただきます。そしてまず最初に確認するのが、「経営セーフティ共済には加入していますか?」という質問です。
まだ活用していない社長に、今日はぜひ知っておいていただきたい制度の話をします。
年84万円がそのまま経費になる仕組み
正式名称は「中小企業倒産防止共済」、通称「経営セーフティ共済」。取引先が倒産したときに、無担保・無保証人で貸付を受けられる、国が運営する共済制度です。
ただし、節税の文脈でこの制度が注目される本当の理由は別にあります。掛金が全額損金に算入できるという点です。
月額最大7万円、年間で最大84万円を掛金として支払えば、その全額を経費として計上できます。法人税率が25〜30%の会社なら、年間で21万〜25万円の節税効果になります。しかも決算直前でも12ヶ月分を前払い一括払いできるため、「今期の利益を少し圧縮したい」という場面でも機動的に使える点が魅力です。
積立上限800万円。「出口」を考えずに入ると痛い目を見る
掛金の積立上限は800万円です。月7万円で満額掛けると、約9年半で上限に達します。
ここで多くの社長が見落としているのが、積み立てた後のことを考えずに加入してしまうケースです。
経営セーフティ共済は、解約すると積立金が益金として計上されます。積み立てるときに損金で節税できても、解約時に丸ごと課税されてしまっては意味がありません。「節税のつもりが、課税の繰り延べだった」というオチになりかねないのです。
そこで有効なのが、解約タイミングを役員退職金の支払いと合わせるという設計です。
退職金と組み合わせると、本当の節税になる
役員退職金は、法人側では損金として計上できます。同じ期に経営セーフティ共済を解約して益金が発生しても、退職金の損金と相殺できるため、法人の課税所得への影響を最小限に抑えられます。
さらに退職した役員個人の側でも、受け取る退職金には「退職所得控除」が使えます。勤続年数に応じた控除額が大きく、同じ金額でも給与や配当より大幅に税負担が軽くなります。
つまり、法人では損益を相殺し、個人では退職所得控除で税負担を圧縮するという二段構えの節税が成立するわけです。この組み合わせを知っているかどうかで、最終的に手元に残るお金が数百万円単位で変わってきます。
加入前に確認しておきたいこと
経営セーフティ共済に加入できるのは、継続して1年以上事業を行っている中小企業です。業種によって資本金や従業員数の要件が異なりますが、多くの中小企業は対象になります。
ただし、いくつか注意点があります。
加入後40ヶ月未満で解約すると、解約手当金が掛金総額を下回ります。節税目的で加入するなら、数年単位で継続することを前提に考えてください。
また、解約のタイミングを誤ると逆効果になることもあります。利益が突出して多い期に解約してしまうと、益金が課税所得をさらに押し上げかねません。解約時期は必ず事前に税理士と相談のうえで決めることをおすすめします。
「知らなかった」では済まない金額の話
年84万円を10年積み立てれば、累計840万円が損金になります。法人税率25%で計算すると、単純な節税累計額は210万円。これが「何もしなかった場合」との差額です。
節税は、制度を知っているかどうかで結果が大きく変わる世界です。顧問税理士がいても、こちらから話題にしないと教えてもらえないことも珍しくありません。特に利益が出ている年は、加入を急ぐ価値があります。
まだ経営セーフティ共済を活用していないなら、今期の決算前に一度確認してみてください。加入資格があるかどうかだけでも、今すぐ調べられます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。