先日、顧問先の社長から保険の提案書を見せられました。「実質返戻率130%」という数字が大きく書かれていて、社長は「これなら入っておいた方がいいですよね」と乗り気でした。
でも、その数字をよく見ると、税金の話が抜け落ちていました。
「実質」の中身を分解すると
保険営業が言う「実質返戻率」は、保険料を損金にできることによる節税効果を上乗せして計算した数字です。単純返戻率が100%を切っていても、法人税の節税分を加算すれば130%に見える、という仕組みです。
この計算が成立するには、二つの前提があります。ひとつは保険料が全額または一部、損金算入できること。もうひとつは、解約返戻金を受け取るときに課税されないことです。
ここで見落とされがちなのが二つ目です。解約返戻金は原則として益金に算入されます。受け取った期の利益に上乗せされ、法人税がかかります。
出口で課税されると数字は崩れる
たとえば保険料の一部が損金算入できるタイプの保険で、実効税率30%の会社が解約返戻金を受け取ったとします。単純返戻率が105%だったとしても、その受取額に30%課税されれば、手取りベースの実質的な効果はかなり目減りします。
節税効果を織り込んだ「実質130%」という数字は、あくまで保険料を払った時点での損金効果を先取りしたものです。出口の課税まで含めて計算すると、130%という数字はそのままの形では残りません。
退職金の原資として解約返戻金を使うなど、出口の課税を相殺する設計をセットで組んでいるなら話は別ですが、その説明がないまま「実質130%」だけを強調されたら注意が必要です。
見るべきは税引き前の単純返戻率と保障内容
保険を検討するときに判断材料にすべきなのは、節税効果を差し引いた税引き前の単純返戻率と、保障内容そのものです。
単純返戻率が90%台であれば、それは「掛け捨てに近いコスト構造の保険に、税制優遇がついている」というだけの商品です。節税メリットは出口の使い方次第で変わりますが、保障内容と単純返戻率は契約時点で確定している事実です。
保険営業から提案を受けたら、次の三つを確認してください。
- 単純返戻率は何%か(節税効果を含まない数字)
- 保険料の損金算入割合はどのくらいか
- 解約返戻金を受け取るタイミングで、益金算入を相殺する出口戦略があるか
この三つに即答できない提案は、盛った数字に乗っているだけの可能性があります。
まだ法人保険の提案書を見比べている最中なら、「実質」という言葉が出てきた瞬間に、その前提条件を聞き返す癖をつけておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。