先日、創業12年になる建設業の社長から、こんな話を聞きました。「保険会社の担当者に勧められて、法人保険に入って8年。そろそろ解約時期を考えないといけない気がするけど、いつがベストなのか正直わからない」。

法人保険は加入するときは丁寧に説明を受けるのに、出口の話までセットで教えてもらえるケースは意外と少ないものです。

解約返戻金のピークは一瞬しかない

保険の営業担当者から「この商品は解約返戻率のピークが15年目です」と説明を受けたとします。多くの経営者はここで安心してしまいがちです。ピークまで待てば得をする、という理解で止まってしまうからです。

ですが本当に考えるべきはその先です。ピークで解約して戻ってきたお金を、どう使うかという出口設計です。解約返戻金は雑収入として益金に計上されます。受け取った瞬間に何も手を打っていなければ、そのまま法人税の課税対象になるだけです。

益金と損金をぶつけて相殺する

ここで効いてくるのが役員退職金です。退職金は損金算入できるため、解約返戻金という益金とタイミングを合わせてぶつければ、税負担を大きく圧縮できます。

たとえば返戻金が3,000万円戻ってきたタイミングで、同額規模の退職金を損金計上できれば、実質的に相殺されて手元に残る税負担は小さくなります。逆に、返戻金を受け取ってから何年も後に退職金を出すような設計だと、益金だけが単独で課税され、後から損金を積み増しても取り返しがつきません。

つまり法人保険で本当に設計すべきなのは、加入時の保障内容や損金割合ではなく、返戻金のピークと退職のタイミングを何年何月まで具体的に合わせるかという一点です。

ピークを過ぎると坂道を転がり落ちる

厄介なのは、返戻率のピークは点であって、期間ではないということです。ピークを過ぎた瞬間から返戻率は下がり始め、年を追うごとにその差は広がっていきます。

「もう少し様子を見よう」「退職のタイミングがまだ決まらないから保留しておこう」という判断を重ねているうちに、気づけばピークから3年、5年と経過し、数百万円単位で戻ってくる金額が目減りしていた、というケースは珍しくありません。

保険は入るときよりやめるときのほうが、金額のインパクトが大きいと言われるのはこのためです。

今の契約のピークを把握していますか

ここまで読んで、自社が加入している法人保険の解約返戻率のピークが何年目に来るのか、即答できたでしょうか。

保険証券や設計書には必ず返戻率の推移表が添付されています。もし手元にないなら、保険会社や代理店に依頼すればすぐに再発行してもらえます。まずはこの一枚を確認し、ピークの時期と、想定している退職や事業承継のタイミングが噛み合っているかを照らし合わせてみてください。

ずれがあるなら、退職時期を前後させるか、保険の設計自体を見直すか、どちらかの手を打つ必要があります。まだ自社の保険のピークを把握していないなら、次の決算までに一度、証券を引っ張り出して確認しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。