先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「メインバンクの担当者に保険を勧められて、断りにくくて入ったんですが、正直中身をよく分かっていないんです」。

決算書を見せてもらうと、保険料が営業利益を静かに圧迫していました。しかも、その保障内容は会社の実情とはあまり噛み合っていませんでした。

実はこの相談、私のところに驚くほど頻繁に届きます。融資でお世話になっている銀行から保険を勧められ、断れずに加入してしまう社長は、決して少数派ではありません。

銀行も保険を「売って」いるという事実

意外と知られていませんが、銀行の多くは保険の販売代理店でもあります。窓口や担当者を通じて保険を売れば、銀行側には手数料収入が入る仕組みです。

もちろん、これ自体は違法でも不誠実でもありません。銀行にとって保険販売は正当な収益源のひとつです。

ただし、ここで押さえておきたいのは「提案してくる商品が、必ずしも自社にとって最適とは限らない」という点です。銀行の担当者は保険の専門家ではなく、あくまで融資の担当者であることがほとんどです。

断れない本当の理由は「保障の必要性」ではない

なぜ多くの社長が、内容をよく理解しないまま契約してしまうのでしょうか。

答えはシンプルで、「融資への影響が怖いから」です。今後の追加融資や借り換えで不利になるのではないか、担当者との関係が悪くなるのではないか。そう考えると、断るという選択肢が心理的に取りにくくなります。

ですが、ここは冷静に整理しておく必要があります。融資の審査は財務内容や事業計画で判断されるものであり、保険に加入するかどうかとは本来まったく別の話です。保険を断ったからといって、融資姿勢が変わるようなことがあれば、それこそ問題視されるべき対応です。

提案は一度持ち帰る、これに尽きる

私が社長方に必ずお伝えしているのは、「その場で即決しない」というシンプルなルールです。

保険提案を受けたら、一度持ち帰ってください。そのうえで、次の2点を第三者、つまり顧問税理士や保険に詳しいファイナンシャルプランナーなどの目で確認してもらうことをお勧めします。

  • 会社に本当にその保障額・保障内容が必要か
  • 保険料の水準が、同種の保障を提供する他の商品と比べて妥当か

特に法人保険は、経営者の死亡保障や退職金準備、事業承継対策など目的が多岐にわたります。目的が曖昧なまま加入すると、保障が過剰だったり逆に不足していたりというミスマッチが起きやすくなります。

義理で入る保険が一番高くつく

断り文句に困って、あるいは関係性を優先して加入した保険ほど、後から見直すのが億劫になりがちです。担当者への義理もあり、「まあいいか」と契約を続けてしまう。

ですが、義理で入った保険の保険料は、何年経っても会社のキャッシュフローから静かに流出し続けます。10年、20年という単位で見ると、決して小さな金額ではありません。

銀行との関係を大切にすることと、保険の中身を精査することは両立できます。むしろ、きちんと検証したうえで加入する社長のほうが、銀行からの信頼も長続きするものです。

もし今、メインバンクから保険提案を受けている最中であれば、その場で結論を出さず、一度持ち帰って専門家に確認する時間を作ってみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。