先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「保険会社の担当者から、今の契約を解約して新しい商品に乗り換えませんかと言われたんですが、どう思います?」
話を聞くと、担当者の説明はもっともらしく、資料もきれいに作り込まれていたそうです。ただ、その場で即決しかけていたのを聞いて、私は思わず「ちょっと待ってください」と言いました。
乗り換え提案が来たら、まず3つ確認する
保険の乗り換え自体が悪いわけではありません。時代に合わなくなった保障を見直すこと自体は、経営判断として十分あり得ます。
ただし、判断材料が営業担当者の説明だけになっている状態で解約を決めるのは危険です。最低限、次の3つを自分の言葉で確認できるようにしておく必要があります。
- 今の保険の予定利率が、今の市場水準と比べてどうなのか
- 今解約した場合の解約返戻金がいくらで、それは払込保険料に対してどの水準なのか
- 社長自身の現在の健康状態で、新しい契約に問題なく入れるのか
順番に見ていきましょう。
予定利率は一度手放すと戻ってこない
古い法人保険、特にバブル期から2000年代前半にかけて契約されたものの中には、予定利率が今では考えられないほど高いものが残っています。今の低金利下で同じ利率の商品を新たに契約することはまずできません。
つまり、高い予定利率の契約を一度解約してしまうと、同等の条件を取り戻す手段はもうないということです。乗り換え提案を受けたら、まず今の契約の予定利率が何%で、乗り換え先が何%なのかを並べて見せてもらいましょう。それだけで、話の前提がかなり変わってきます。
解約返戻金は「今」の金額で判断していいのか
解約返戻金は契約からの経過年数によって水準が大きく変わります。今解約すると払込保険料を大きく下回るタイミングなのに、営業担当者が「まとまった金額が戻ってきますよ」と説明することもあります。
金額の大小だけでなく、あと数年待てば返戻率のピークが来るのかどうかも合わせて確認してください。ピーク直前で解約してしまい、数百万円単位で損をしていたケースを何件も見てきました。比較表を作って、今解約した場合と数年待った場合の返戻金を並べてみることをお勧めします。
意外と見落とされる「健康告知のやり直し」
ここが一番見落とされがちなポイントです。新しい契約に切り替えるということは、告知や場合によっては健康診断からやり直すということです。
契約時から時間が経っていれば、その間に持病が見つかっていたり、健康診断の数値が変わっていたりすることは珍しくありません。その状態で新契約の告知をすると、加入自体を断られるか、保険料が割増しになる可能性があります。
高い利率の古い契約を手放した上に、新しい契約にも十分な条件で入れなかった、という二重の後悔をした社長を見たことがあります。乗り換えの話が出たら、保障内容やコストだけでなく、自分の今の健康状態で新契約に問題なく入れるかを先に確認しておくべきです。
乗り換えを検討する価値があるケースもある
誤解のないように言っておくと、乗り換えたほうがよいケースも実際にあります。保障内容が今の会社の実情に合わなくなっている場合や、解約返戻金のピークをすでに過ぎていて、これ以上待つ理由がない場合です。
そうした状況であれば、乗り換えは合理的な選択になり得ます。大事なのは、営業担当者の説明を一度持ち帰り、予定利率・解約返戻金の推移・健康状態の3点を自社の顧問税理士や別の視点を持つ専門家と一緒に比較表に落とし込んでから判断することです。
その場でサインを求められても、「一度持ち帰って比較検討します」と答えて構いません。乗り換えの提案が来たときこそ、慌てず立ち止まってみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。