先日、ある製造業の社長から、少し寂しそうな相談を受けました。
数年前、太陽光発電の設備投資をしたそうです。理由は「即時償却で大きく節税できる」と聞いたから。ところが蓋を開けてみると、期待していたほどの償却メリットがなく、投資回収にも想定以上に時間がかかっているとのことでした。
話を聞いていくと、よくある誤解がそこにありました。
かつては確かにお得だった
太陽光発電設備には、以前「グリーン投資減税」や「中小企業経営強化税制」など、即時償却や税額控除が使える優遇制度がありました。設備価格の全額をその年の経費にできるとなれば、確かにインパクトのある節税策です。
決算前に利益が出過ぎて困っている社長にとって、これほど魅力的な話はなかったでしょう。
ところがこうした優遇は、対象設備の縮小や制度そのものの終了によって、今ではほぼ使えなくなっています。太陽光発電に関しても、即時償却の対象からは外れて久しいのが実情です。
「制度ありき」の投資が抱えるリスク
この社長の失敗の本質は、太陽光発電そのものが悪かったわけではありません。問題は、投資の主目的が「発電事業として成立するか」ではなく「今期の節税になるか」だった点にあります。
制度は毎年のように見直されます。今年使えた優遇が、来年も同じ形で使えるとは限りません。むしろ、税制優遇が手厚い分野ほど、後から縮小・終了されるスピードも速いというのが実態です。
即時償却を前提に投資回収シミュレーションを組んでしまうと、制度が変わった瞬間に前提が崩れます。設備自体の収益力(売電単価、稼働率、メンテナンスコスト)で採算が取れるかどうかを、まず先に見るべきだったのです。
節税額と投資額を切り離して考える
節税というのは、あくまで「投資に伴う副産物」です。主目的にしてしまうと、この社長のように「償却メリットが減った途端に苦しくなる」という事態を招きます。
実務でお伝えしているのは、次の順番で検討することです。
- まず、その設備・事業単体で採算が取れるかを試算する
- 次に、現行制度でどの程度の節税効果が上乗せされるかを確認する
- 最後に、制度が縮小・終了した場合のシナリオでも投資回収できるかをチェックする
節税効果がなくても事業として成立するなら、その投資は健全です。逆に、節税がなければ赤字になるという投資は、そもそも入り口の段階で見送るべき案件だったと言えます。
今、太陽光投資を検討している社長へ
今から太陽光発電への投資を検討している方は、即時償却のような大型優遇は基本的に期待できないという前提で計画を立てることをおすすめします。
売電単価の下落傾向、設備の経年劣化、災害リスクへの備えなど、事業としての地に足の着いた採算計算を優先してください。節税効果は、その上でのおまけとして捉えるくらいがちょうど良いバランスです。
制度は変わりますが、儲かる事業は制度が変わっても儲かり続けます。投資判断の軸をどちらに置くか、決算前にもう一度見直してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。