先日、製造業を営む社長からこんな一言をもらいました。「うちの顧問税理士、なんで教えてくれなかったんですかね」と。決算を終えたあとに、同業の社長から太陽光発電の節税話を聞いたというのです。知っていれば、今期の税金が1000万円近く変わっていたかもしれない、と。

その悔しさ、よくわかります。税金は「知っているかどうか」で、同じ売上・同じ利益でも手元に残るお金がまったく違ってくる世界です。今日は、その太陽光発電と「即時償却」の組み合わせについて、できるだけわかりやすくお伝えします。

普通の減価償却だと、節税はスローペースすぎる

太陽光発電設備を3000万円で購入したとします。一般的な減価償却だと、この3000万円は法定耐用年数にしたがって少しずつ経費に計上されていきます。太陽光設備の場合、17年かけて分割して落としていくイメージです。

単純計算で1年あたり約175万円の経費。税率33%で計算すると、初年度の節税効果はおよそ58万円ほど。もちろんゼロよりはいいですが、3000万円の投資に対してはずいぶん地味な数字に感じませんか。

しかも節税効果が17年間に薄く広がってしまうので、「今期の利益をなんとかしたい」という社長のニーズには正直かみ合いません。

即時償却を使うと、初年度に話が変わる

ここで登場するのが「即時償却」という仕組みです。要件を満たせば、購入した設備の取得価額を購入した年度に全額経費として計上できます。3000万円なら、3000万円まるごとその年の経費です。

税率33%で計算すると、3000万円 × 33% = 約990万円。初年度だけで約1000万円の節税効果が生まれる計算になります。17年かけて積み上げるはずだった節税を、1年目に一気に前倒しできるわけです。

キャッシュフローの観点から見ても、これは大きな違いです。節税した1000万円を次の投資や運転資金に回せる。時間の価値を考えると、17年分割とは比べものにならないメリットがあります。

しかも、設備は資産として残り続ける

節税だけでなく、太陽光発電には売電収入という副産物もあります。設備を経費に落としながら、毎年一定の収入が入り続ける構造です。

経費に落としたからといって設備が消えるわけではありません。物理的には屋根や土地の上に残り、電気を売り続けてくれます。節税しながら資産が残る、という点が太陽光発電が法人の節税スキームとして注目される理由のひとつです。

もちろん売電単価や設置条件によって収益性は変わりますので、投資としての採算は別途しっかり検証する必要があります。ただ、節税と収益の両面を持つ手段として、一定規模以上の法人オーナーには選択肢として知っておく価値がある話です。

「知っている社長」と「知らない社長」の差

正直に言うと、この手の話は「知っている人が何年も使っている」世界です。制度自体は以前からあるものですが、顧問税理士から積極的に提案されるケースはそう多くありません。

税理士側も、提案するには設備投資の採算、資金繰り、適用要件の確認など、通常の申告業務より手間がかかります。社長側から「こういう節税手段はないか」と能動的に聞いていかないと、なかなか出てこない情報でもあります。

決算直前に「今期の利益が想定より出てしまった」と慌てる社長は少なくありません。でも設備投資を使った節税は、基本的に「買った年度」でしか使えない。期が終わってから後悔しても手遅れです。だからこそ、期中から選択肢として持っておくことが重要です。

適用には要件があるので、必ず事前確認を

ひとつ大事なことをお伝えします。即時償却は「どんな会社でも、どんな設備でも無条件に使える」ものではありません。中小企業投資促進税制や経営強化法など、根拠となる制度によって適用要件が異なりますし、設備の種類や規模、会社の状況によっても変わってきます。

また、即時償却を使うと当期の課税所得が大きく下がる一方、翌期以降の減価償却費はなくなります。繰越欠損金の扱いや、金融機関への決算書の見せ方など、税務以外の観点も含めて総合的に判断する必要があります。

「1000万節税できる」という数字だけが独り歩きしないよう、導入を検討する際は必ず担当税理士と一緒に自社への適用可否を確認してください。

今期、利益が出そうな社長は、決算が締まる前に一度「太陽光の即時償却、うちは使えますか?」と税理士に投げかけてみてください。その一言が、数百万・数千万の差になることがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。