「そういえば、今年も厨房機器を入れ替えようと思っているんですが、何か節税になりますか?」
先月、飲食店を5店舗経営している社長から、こんな質問をいただきました。老朽化した設備の更新を検討しているけれど、どうせ買うなら少しでも税負担を減らしたい、と。
そこで即座にお伝えしたのが、中小企業経営強化税制の話です。使いこなせば、500万円の設備が初年度に丸ごと経費になります。この制度を知っているかどうかで、決算の手元資金が大きく変わってくるんです。
500万円の設備を買ったら、初年度に150万円分の税負担が減る
通常、設備投資は「減価償却」といって、法定耐用年数に沿って何年もかけて少しずつ経費にしていきます。機械装置であれば耐用年数が10年前後のものも多く、500万円を10年で償却すれば1年あたりの経費は50万円、節税効果は年間15万円程度にとどまります。
ところが、中小企業経営強化税制を活用すると、対象設備の取得価額を初年度に100%即時償却できます。500万円の設備なら、その年に500万円がまるごと経費になる。実効税率を約30%とすれば、節税効果は約150万円です。
10年かけて少しずつ取り戻すはずだった節税を、最初の1年で一気に刈り取れる。しかもその分だけ当期の納税額が減り、手元のキャッシュフローに直結します。設備を買ったうえに手元が厚くなる——これが即時償却の最大の魅力です。
製造業だけじゃない。飲食・IT・小売も対象
「うちの業種では使えないんじゃ…」と思う方が多いのですが、対象範囲は思っているより広いです。
主な対象設備の取得価額の目安はこちらです:
- 機械装置:160万円以上
- 器具備品(工具・備品など):30万円以上
- 建物附属設備:60万円以上
- ソフトウエア:70万円以上
業種も製造業に限りません。厨房機器を入れ替える飲食店、POSシステムを導入する小売店、サーバーを購入するIT企業——どれも対象になりえます。「うちは関係ない」と思って調べもしなかった、というのが一番もったいないパターンです。
ただし、すべての設備が無条件で対象になるわけではなく、旧モデルと比べて一定以上の生産性向上が認められる設備であることが要件です。購入前に、対象設備かどうかの確認が必要になります。
唯一にして最大の落とし穴:事前申請を忘れずに
この制度を使ううえで、絶対に外せないポイントが一つあります。
設備を購入する「前」に、「経営力向上計画」を国(主務大臣)に申請して認定を受けることです。
「購入してから申請すればいいか」は通用しません。認定前に設備を取得してしまうと、この制度は一切使えなくなります。順番を間違えると、150万円の節税機会を丸ごと失います。
申請から認定までの審査期間は制度上30日とされていますが、書類の準備期間も含めると実務上は数ヶ月かかるケースも少なくありません。「決算前にまとめて動こう」と思っていると、間に合わなくなるリスクがあります。
「検討中」の段階で動き始めるのが正解
設備の入れ替えや新規導入を考えているなら、今すぐ税理士か認定支援機関に相談することをおすすめします。「経営力向上計画」の申請書類は様式が決まっており、内容のとりまとめに時間がかかることがあります。
今期中にこの制度を活かしたいなら、少なくとも決算の3〜4ヶ月前には動き始めるのが理想的です。設備投資を検討している段階で一度相談しておくと、申請スケジュールも含めてスムーズに進められます。
設備を買うなら、どうせなら最大限に節税に活かしてほしいと思います。まだ顧問税理士に話していないなら、次の打ち合わせで真っ先にこの制度の話を切り出してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。