先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「経費をとにかく増やせば税金が減ると思って、色々買い込んでいたら、税務調査で全部否認されて、重加算税まで取られました」と。

話を聞くと、決して悪意があったわけではありません。むしろ真面目に、節税のために「使えるものは全部経費にしよう」と考えた結果でした。ですが、その考え方こそが、追徴課税を招く典型的な落とし穴なのです。

経費は「使った額」ではなく「関係性」で判断される

多くの経営者が誤解しているのですが、経費として認められるかどうかは、金額の大小ではなく、事業との関連性で決まります。

たとえばプライベートの家族旅行を「社員研修」として経費にしたり、個人的な趣味の道具を「取材用機材」として計上したり。こうした支出は、いくら領収書があっても、事業との合理的なつながりを説明できなければ、税務調査で否認されます。

私が相談を受けた社長のケースも、まさにこれでした。事業とは無関係な支出を、なんとなく「経費っぽいもの」として積み上げていた結果、調査官に一つひとつ「これは何のための支出ですか」と問われ、答えに詰まってしまったのです。

否認されるだけでは終わらない

厄介なのは、経費が否認されると、単に「その分の税金を追加で払う」だけでは済まない点です。

意図的に事業関連性のない支出を経費にしていたと判断されると、通常の過少申告加算税ではなく、より重い重加算税が課されることがあります。税率でいうと、過少申告加算税が10〜15%程度であるのに対し、重加算税は35〜40%にもなります。

さらに、一度「悪質」と判断されると、翌年以降の税務調査でも厳しくチェックされる傾向があります。目先の節税のつもりが、長期的な信頼まで失う結果になりかねません。

節税と脱税の境目はどこにあるか

節税と脱税を分けるのは、「事業のために使ったかどうか」を客観的に説明できるかどうかです。

たとえば交際費であれば、誰と、何の目的で、どんな話をしたのかを記録しておく。出張費であれば、業務上の必要性と行程を明確にしておく。こうした裏付けがあれば、多少金額が大きくても、正当な経費として認められやすくなります。

逆に言えば、裏付けのない支出は、たとえ少額であっても「なんとなく怪しい経費」として調査対象になりやすいということです。

まずは「説明できるか」を基準に

節税というと、経費を増やすことばかりに意識が向きがちですが、本当に大切なのは「その支出を税務署に堂々と説明できるか」という視点です。

経費を無理に積み増すより、事業との関連性が明確な支出を、きちんと記録とともに計上する方が、結果的に税務リスクは低くなります。

もし今、「これって経費にしていいのか怪しいな」と感じる支出に心当たりがあるなら、決算を迎える前に一度、顧問税理士に相談してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。