先日、年商3億円の建設業の社長から連絡をいただきました。「税務調査で100万円近い追徴が来た。でも、変なことは何もしていないのに…」という内容でした。

話を聞いてみると、問題はシロクロの話ではなく、「調査官の前での言い方」にありました。

税務調査は何も不正をしていなくても、対応を間違えると調査が深掘りされ、余計な追徴を招くことがあります。今日は、現場でよく耳にする「絶対に言ってはいけない3つの言葉」とその理由を紹介します。

①「全部、税理士に任せています」

税理士に申告を任せること自体は問題ありません。ただし、調査官の前でこの一言を言うと、話が変わります。

調査官が最初に確認するのは「社長が自社の数字を把握しているか」です。「税理士任せ」という答えは「自分では何もわかりません」と宣言しているのと同じで、調査を細部まで掘り下げるきっかけを与えてしまいます。

さらに「経営者が意図的に関与せず、不正を見えにくくしていた」と判断されるケースでは、通常の本税・延滞税に加えて重加算税35%が上乗せされます。追徴額が一気に跳ね上がるのはこのパターンです。

正しい答え方は「おおまかな数字は把握しています。詳細は確認して改めてご報告します」。この一言で調査の雰囲気が変わります。

②「たぶん合ってると思います」

曖昧な答えは調査官にとっての「招待状」です。

税務調査では、その場で断言できないことは「確認して後ほど回答します」と伝えるのが正解です。なんとなく答えて後から訂正することになると、「最初と説明が違う」と指摘され、誠実さそのものを疑われます。

「たぶん」「おそらく」「だったと思いますが…」が続くと、調査の範囲が広がりやすくなります。通常は過去3年分が対象ですが、悪質性があると判断された場合は5年、さらに7年まで遡られることもあります。

わからないことを正直に「確認します」と言うのは誠実な対応です。逃げているわけではなく、「正確な情報を提供します」という意思表示。その場で無理に答えを作ろうとしないことが大切です。

③「この経費、問題ないですよね?」

これが最も危険な一言です。

自分から「これは大丈夫ですか?」と確認してしまうと、調査官は「ここを気にしているんだな」と敏感に反応します。指摘される前に自分で疑念を示すのは、まさに調査のターゲットを自ら教えているようなものです。

経費処理に自信があるなら、黙って資料を出す。不安な点があるなら、調査当日ではなく事前に税理士と対応方針をすり合わせておく。これが正しい手順です。

調査官から聞かれていないことを自ら説明する必要はありません。「聞かれたことだけ、正確に答える」——これが税務調査を乗り越える鉄則です。

調査が来る前にできること

税務調査の通知が届いてから慌てても、できることには限りがあります。日頃から整理しておきたいのは次の点です。

帳簿・領収書の整理は当然として、重要なのは「なぜこの経費を計上したか」を社長自身が説明できる状態にしておくこと。税理士任せにするのではなく、大きな支出については背景と目的をメモしておくだけで、調査当日の答え方が格段に変わります。

税務調査は、ルールを守っていれば怖くありません。でも「言葉の選び方」を間違えると、余計な疑念を生んで調査が長引きます。今日紹介した3つの言葉を頭に入れておくだけで、万が一の場面での対応がまったく変わるはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。