先日、ある建設会社の社長から「税務署から電話がきた」という連絡をもらいました。決算が終わってひと息ついたタイミングでの出来事。「なんでうちが選ばれたんだろう」と、かなり焦っている様子でした。

実は、税務署は「なんとなく」で調査先を選んでいるわけではありません。明確な選定基準があって、その基準に引っかかった会社が対象になる仕組みです。逆に言えば、その基準を知っておけば「自社がリスクゾーンにいるかどうか」が事前にわかります。

税務署が調査先を選ぶ「5つのトリガー」

まず、現場でよく言われる選定基準を5つお伝えします。

① 売上が急に落ちた期がある

前期より売上が大幅に減少していると、「申告漏れや隠蔽では?」と疑われやすくなります。特に売上が20〜30%以上落ち込んでいると、税務署のシステムが自動的に反応します。事業縮小や得意先喪失など正当な理由があっても、説明できる根拠が必要です。

② 交際費・役員報酬が同業と比べて突出している

税務署は業種別・規模別のデータを大量に保有しています。同業他社と比べて交際費や役員報酬が著しく高い場合、外れ値として自動検出される仕組みになっています。「うちは特殊な業態だから」という説明が通じないケースも少なくありません。

③ 現金取引が多い

飲食・建設・小売など、現金が多く動く業種は調査頻度が高い傾向が続いています。売上の計上漏れが起きやすいとみられているからです。キャッシュレス化が進んでいる今でも、現金比率が高い会社は引き続き注意が必要です。

④ 業種平均より利益率が低い

同業他社と比べて利益率が明らかに低い場合も、「経費の水増しや売上隠蔽があるのでは」と疑われるポイントになります。低収益自体は問題ではありませんが、その理由を帳簿や資料で説明できるかどうかが重要です。

⑤ 過去の調査で指摘を受けたことがある

これが最もリスクの高いパターンです。一度指摘を受けた会社は「再発リスクあり」とみなされ、次の調査対象に選ばれやすくなります。「ちょっとした指摘だったから大丈夫」と思っている方ほど、実は注意が必要です。

2つ以上当てはまったら、本気で動いてほしい

1つだけなら「様子を見よう」で済むかもしれません。でも2つ以上当てはまっているなら、今すぐ帳簿の現状を確認することをおすすめします。

調査に入られると、通常は過去3年分の帳簿を精査されます。経費の一部が否認されれば追徴課税が発生し、利息にあたる延滞税も上乗せされます。さらに悪質と判断された場合は、重加算税として本税の35%が加算されるケースもあります。3年前の取引まで掘り起こされることを考えると、「当時の領収書が保管されているか」「経費の根拠資料が残っているか」を今のうちに確認しておく価値は十分にあります。

「備え」こそが最大のリスク対策

税務調査対策というと、後ろめたいことがある会社がやるものだと思われがちです。でも実際は違います。正しく申告していても、書類の不備や説明不足で余計な税金を取られることは珍しくありません。

大切なのは、帳簿を正確に保つこと、経費の根拠資料をきちんと残すこと、そしてリスクのサインが出たら早めに税理士に相談することです。5つのトリガーに1つでも心当たりがあるなら、次の決算前に一度、顧問税理士と現状を確認してみてください。

早めの一手が、3年分の追徴課税を防ぐ最善の策です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。