先日、ある卸売業の社長から夜に連絡が入りました。「今日、税務署の人が来て、いろいろ聞かれたんですが……」という内容でした。
話を詳しく聞くと、調査官に書類を次々と見せながら、その場で記憶をたどって説明をしてしまったとのこと。後日、重加算税を含む追徴課税の通知が届き、その金額を見た社長は言葉を失ったそうです。
税務調査は「来てから」の動き方で、結果が数百万円単位で変わることがあります。今回は、絶対に知っておいてほしい初動の3つを、率直にお伝えします。
第3位:開示した書類は、必ずコピーを手元に残す
調査官に見せた書類は、そのまま「証拠」として使われます。何を開示したのかを記録しておかないと、後の交渉で「あの書類を見た・見ていない」という水掛け論になり、不利な立場に置かれることがあります。
コピーを取ること自体は、決して不審な行動ではありません。「私はこれを開示しました」という記録を手元に持っておくだけで、後の交渉での発言に一貫性が生まれます。
実務では、開示書類の一覧を手書きでメモしておくだけでも十分です。地味な作業ですが、この一手間が後の展開を大きく変えることがあります。
第2位:税理士に、すぐ電話する
「調査当日は、もう一通り対応してしまったから今さら……」と思っている方もいるかもしれません。でも、税務調査は1日で終わりません。初日の午後でも、翌日以降でも、税理士の立会を求める権利はあります。
一人で対応すると、意図せず言質を取られるリスクが高まります。「そう言えば、あの取引は……」と話が広がっていく場面を、私はこれまで何度も見てきました。社長はもちろん悪気がないのですが、それが問題なのです。
税理士がいるだけで、調査官の質問の仕方も変わります。プロが同席していると、調査の範囲が不必要に広がりにくくなるからです。一人で抱え込まず、まず一本電話を入れることが、最もコスパの高い防御策です。
第1位:その場で、絶対に即答しない
これが最も重要です。調査官の質問に対して、その場で記憶をたどりながら答えることは、非常に危険な行為です。
人間の記憶は不完全です。「たしか、あれはこういう理由で……」と答えた内容が後から事実と異なると、「虚偽の答弁があった」と判断されるリスクがあります。その判断が、重加算税35%の引き金になるケースが実際にあります。通常の過少申告加算税が10〜15%なのに対し、重加算税は35%。差は2倍以上です。
正しい答え方は、「確認してから回答します」のひと言です。この一言は、法律上も認められた正当な対応であり、「答えたくないのか」と思われる心配は不要です。むしろ、慎重に事実を確認しようとする誠実な態度として受け取られます。
答えを保留し、税理士と事実確認をしてから回答する。これだけで、重加算税のリスクを大幅に下げることができます。
調査は「来てから」ではなく「来る前」が勝負
税務調査は、調査官が玄関を入ってからの最初の動き方が結果を左右します。慌てて書類を広げ、記憶で答えてしまうと、それだけで交渉の余地が狭まります。
「税務調査が来た=悪いことがバレる」ではありません。適切に対応すれば、指摘を最小限に抑えることは十分に可能です。実際、同じ規模・同じ業種でも、初動の差が最終的な追徴額の差につながることは少なくありません。
まだ顧問税理士と「もし調査が来たら」というシミュレーションをしていないなら、今期中に一度、話し合っておくことをおすすめします。来てから動くのではなく、来る前に準備している会社が、最終的に税務調査を有利に乗り越えています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。