先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「税務署から電話があって、来週調査に来ると言われた。今から何をすればいい?」
その社長は年商3億円ほどの会社を経営していて、特に心当たりもないのに突然連絡が来たそうです。あまりのことに頭が真っ白になり、最初の3日間は倉庫の領収書をひっくり返すだけで終わってしまいました。
実は、この「最初の3日間の使い方」が、税務調査の結末を大きく左右します。
72時間の初動が、追徴税額を変える
税務調査は「来てからの対応」より、「連絡が来てからの72時間」が勝負です。
この最初の3日間をどう使うかで、最終的な追徴額が数百万円単位で変わることがあります。大げさに聞こえるかもしれませんが、実際にそういうケースは珍しくありません。
特に避けたいのが「重加算税」です。通常の申告漏れなら過少申告加算税(10〜15%程度)で済みますが、対応を誤ると「故意に隠蔽した」と判断されて35%の重加算税が加わります。同じ100万円の申告漏れでも、加算税が15万円か35万円かでは雲泥の差です。
最初の72時間でやるべき3つのこと
連絡を受けてからの動き方を整理すると、やるべきことは3つに絞られます。
① 顧問税理士へ即日連絡する
電話を切った直後が最優先です。日程調整から事前準備まで、すべてを税理士に任せることで調査の進み方が大きく変わります。税理士が同席するかどうかだけでも、調査官の質問の踏み込み方が違うと言われています。「まず自分で調べてから」という判断が、最も危険です。
② 調査対象期間の帳簿を一括確認する
税務調査は通常、直近3年分が対象です。その期間の総勘定元帳、領収書、請求書を一か所に集めて、税理士と一緒にざっと確認します。「問題がないか」を探すのではなく、「説明できない支出がないか」という視点で見ていくのがポイントです。
③ 説明できない支出をリスト化する
使途や出どころが曖昧な支出を先にピックアップしておきます。調査当日に「これは何ですか?」と聞かれて現場で詰まってしまうのが、最もまずい場面の一つです。事前にリストを作っておけば、税理士が適切な答え方を一緒に考えてくれます。
慌てた対応が追徴を膨らませる
冒頭の社長の話に戻ります。彼が失敗したのは、「まず自分で何とかしようとした」ことでした。
領収書を一人で探しながら「これは経費にならないかも」「あの支出はどう説明しよう」と3日間悩み続けた時間は、税理士と一緒に事前整理に使えたはずの時間です。
税務調査官は、納税者の準備状況をよく見ています。帳簿が整理されていて税理士もしっかり同席している状態で迎えると、調査がスムーズに進みやすくなります。逆に準備が整っていないと、細かい部分まで深く突っ込まれることがあります。
また、連絡を受けた後に慌てて書類を作り直したり、後から説明を付け足したりするのは絶対に避けてください。そういった行動が「隠蔽の証拠」と取られると、重加算税の対象になります。
来る前に顧問税理士と話しておく
税務調査の怖さは、突然やってくるところにあります。「うちにはまだ関係ない」と思っている社長ほど、連絡が来たときに初動が遅れます。
だからこそ、今のうちに顧問税理士と「連絡が来たらどう動くか」を一度話し合っておくのが最善の備えです。調査当日の対応より、その前の準備に時間をかける方が圧倒的に効果的です。
税務調査は、準備した側が有利な戦いです。まだ顧問税理士と緊急時の段取りを決めていないなら、次の打ち合わせのときに一度確認しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。