先日、都内でWebサービスを運営する社長からこんな連絡がありました。「うちって製造業じゃないけど、試験研究費の税額控除って使えるんですか?」と。
聞いてみると、毎年数百万円の開発費を計上しているのに、一度もこの制度を使ったことがなかったそうです。正直、もったいなかった。
開発費が「二重に効く」制度がある
試験研究費の税額控除とは、簡単に言うと開発費を経費で落とした上に、さらに法人税から直接差し引けるという制度です。
通常、経費は「利益を減らして法人税を下げる」効果があります。でも税額控除は違います。利益から引くのではなく、計算後の税額そのものから引くので、節税効果がはるかに強力なんです。
控除率は最大15%。年間700万円の試験研究費があれば、法人税が約100万円減る計算になります。これは経費計上の効果に上乗せされるので、実質的に開発費が二重に節税に機能することになります。
製造業だけじゃない、IT・サービス業も対象
「うちは製造業じゃないから関係ない」と思っている方が多いのですが、それは誤解です。
試験研究費の税額控除は、業種を問わず適用できます。IT企業の新システム開発費、サービス業の新サービス設計にかかる費用、業務改善のための研究開発……これらもしっかり対象になり得ます。
具体的に対象になりやすい費用を挙げると:
- 新製品・新サービスの研究開発にかかる人件費(エンジニア・開発担当者の給与など)
- プロトタイプの製作費や試作品にかかる材料費
- 外部に委託した試験・研究の委託費
- 開発に使用した消耗品・備品
特に人件費は金額が大きくなりやすいので、開発チームを抱えている会社ほど恩恵が大きい制度です。
「何が試験研究費か」の定義が肝心
ただし、この制度には落とし穴もあります。
すべての開発費が対象になるわけではなく、「試験研究費」として認められる範囲には法律上の定義があります。簡単に言うと、新しい知見を得るため、または既存の知見を新たな製品・技術に応用するための活動が対象です。
たとえば、既存システムの単純な保守・メンテナンスや、既製品の仕入れ・販売にかかる費用は対象外です。「開発っぽい費用」をすべて計上しようとすると、税務調査で否認されるリスクがあります。
実務では、開発プロジェクトごとに「これは試験研究に該当するか」を丁寧に仕分けしていく作業が必要です。面倒ではありますが、それだけの価値がある制度です。
今期の決算前に確認してほしいこと
もし会社で何らかの開発活動をしているなら、今すぐ以下の3点を確認してみてください。
- 今期、開発プロジェクトにかかった費用はいくらか
- そのうち、人件費はどれくらいか
- 税理士はこの控除を申告書に組み込んでいるか
最後の点が意外と見落とされています。顧問税理士に任せているから大丈夫、と思っていても、こちらから「試験研究費の税額控除を使えますか?」と聞いてみると「検討できます」という返事が返ってくることも珍しくありません。
年間の開発費が数百万円あるなら、数十万〜百万円単位の節税になる可能性があります。まだ検討したことがないなら、今期の決算が締まる前に一度税理士に確認することをおすすめします。使えるお金は、しっかり手元に残しておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。