先日、知り合いの税理士からこんな話を聞きました。

「年商5億の社長がね、息子に会社を渡そうとしたら相続税が1億円以上かかるって試算が出て、真っ青になったんだよ」

事前の対策なし、専門家への相談もなし。気づいた時には手遅れ——というのが、中小企業の事業承継でよくあるパターンです。

業績のいい会社ほど「株の重さ」で苦しむ

上場していない会社の株式は、税務上の評価方法によって価格が決まります。代表的なのが「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」の2つで、どちらも業績がよいほど評価額が上がる仕組みです。

年商5億円で利益も安定している会社であれば、自社株の評価額が5億円を超えることは珍しくありません。そこに相続税率をかけると、1億円を超える税負担が現実のものとなります。

しかも自社株は現金と違い、簡単に換金できません。相続税を払うために事業そのものを手放す、という最悪のシナリオが起きている会社も、実際にあります。

合法的に株価を「下げる」手法がある

対策の第一歩は、相続が発生する前に株価を引き下げることです。これは脱税ではなく、税法の枠内で認められた正当な節税行為です。

代表的な手法としては、役員退職金の支給(純資産を減らすことで評価額が下がる)、含み損資産の損失計上、あるいは持株会社化による評価方法の変更などが挙げられます。

これらを複数組み合わせることで、評価額を70%近く引き下げることも十分に可能です。5億円だった株が、対策後は1.5億円程度の評価になる——そのくらいのインパクトがあります。

事業承継税制の特例、2027年末が本当のタイムリミット

株価対策と並んで重要なのが、事業承継税制の特例措置です。

後継者が自社株を贈与・相続で受け取る際に発生する税金を、一定要件のもとで猶予(実質的に免除)できる制度です。通常の制度より適用要件が緩い「特例措置」は、使える期間が限られています。

特例承継計画の提出期限はすでに2026年3月末で締め切られていますが、実際の承継(贈与・相続)は2027年12月31日までが対象です。計画提出を済ませた会社は、あとは実行あるのみという段階です。

「まだ時間がある」と思っているなら、株価対策の実行にも数年かかることを念頭に置いてください。2026年中に動き出さないと、間に合わないケースが出てきます。

顧問税理士に聞いたことがないなら、一度確認を

少し踏み込んだ話をします。

顧問税理士がいても、事業承継に特化した節税提案を積極的にしてくれるかどうかは、先生によって差があります。日々の記帳・決算・申告で手一杯で、相続や承継の専門知識が深くないケースも、正直なところ少なくありません。

「株価対策の話、一度も出たことがない」という社長は、事業承継専門の税理士やコンサルタントにセカンドオピニオンを求めてみることをおすすめします。相談料は数十万円かかることもありますが、1億円以上の節税効果と比較すれば、費用対効果は明らかです。

後継者がいる社長へ——動くなら今です

株価対策には時間がかかります。退職金の支給タイミング、資産の組み替え、持株会社の設立と組織再編——こうした対策は、計画から実行まで数年単位のスパンが必要です。

「うちはまだ早い」と先送りしているうちに、特例措置の期限が来て、株価対策の時間もなくなる。そういう会社を、この数年で何社も見てきたと専門家は口をそろえます。

自社株の評価額がいくらで、何も手を打たなければ相続税がいくらになるのか。まずそこだけ試算してもらうだけでも、見えてくるものがあるはずです。後継者に会社をちゃんと渡したいなら、その一歩を今期中に踏み出してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。