先日、製造業を営む60代の社長からこんな相談を受けました。「息子に会社を継がせようと思っているんだけど、税金がどれくらいかかるか怖くて試算もしていない」と。

正直に言います。その怖さ、正解です。対策なしで迎えると、想像以上の金額が待ち構えていることがあります。

株価3億円の会社を継がせると、税金はいくらか

自社株の評価額が3億円の会社を子どもに相続させた場合、他の財産も合わせると相続税が1億円を超えることは珍しくありません。

「うちはそこまで大きくない」と思っている社長も多いですが、中小企業の自社株は思わぬ高評価が出ることがあります。利益が安定していて内部留保がそれなりにある会社なら、体感より2〜3倍高い評価になるケースも。

問題は、相続税は現金で払わなければならないことです。会社の株を相続しても、そこから税金は出てきません。息子が1億円を用意できなければ、最悪の場合は株を売ることになり、経営権まで失う事態にもなりかねません。

「3年計画」で税負担を半分以下にできる理由

ここで知っておきたいのが、事業承継税制の特例措置です。

簡単に言うと、後継者が自社株を相続・贈与で受け取ったとき、一定の要件を満たせば相続税・贈与税の納税を最大100%猶予してくれる制度です。経営を継続している限り、猶予は続きます。

ただし、この特例を使うだけでは「先送りしているだけ」という見方もできます。そこで組み合わせたいのが、株価引き下げ策です。

株価を下げる代表的な方法には、役員退職金の支給、不要な資産の整理、含み損資産の売却などがあります。これらを計画的に実行することで、課税対象となる株の評価額そのものを圧縮できます。

3億円あった株価が1.5億円に下がれば、猶予される税額も半分になる。特例で猶予しながら株価も下げる——この二段構えが「3年で税負担を半分以下」を可能にする核心です。

3年間のロードマップのイメージ

具体的な流れとしては、こんなイメージです。

1年目:準備と株価診断 現状の株価評価を試算し、どの引き下げ策が使えるかを税理士と整理します。事業承継税制の特例を使うためには「特例承継計画」を都道府県知事に提出する必要があり、この書類作成もこの時期に進めます。

2年目:株価引き下げの実行 役員退職金の支給や資産整理など、自社の状況に合った株価対策を実行します。ここで焦って一気にやろうとすると、税務上の問題が生じることもあるので、段階的に進めるのがポイントです。

3年目:株式の移転と特例の適用 株価が下がったタイミングで贈与または相続による株式移転を行い、事業承継税制の特例を適用します。低くなった評価額に特例が乗っかることで、実質的な税負担が大幅に減ります。

残り時間は本当に少ない

注意していただきたいのが、この特例措置には期限があることです。

特例承継計画の提出期限は2026年3月末、そして特例の適用を受けるための贈与・相続の期限は2027年12月末です。

今日は2026年6月。3年計画と言っても、実質的に動ける時間は1年半ほどしかありません。来年「そろそろ動こうか」では間に合わないケースも出てきます。

「まだ先の話」と思っていた社長ほど、実際に試算してみると「もっと早く動けばよかった」とおっしゃいます。特に株価の引き下げ策は、時間をかけて丁寧にやらないと効果が出ないものも多い。

何より怖いのは「何もしないこと」

事業承継の税負担は、対策をするかしないかで数千万円単位で変わることがあります。そしてその差は、ほぼ「早く動いたかどうか」で決まります。

「うちの規模で税理士に相談するほどでもない」は禁物です。事業承継を専門にしている税理士なら、現状の株価診断から始めて、どんな手が打てるかを整理してくれます。まずは「自社の株価がいくらか」を知るところから始めてみてください。

まだ何も動いていないなら、今月中に専門家への相談をスケジュールに入れることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。