先日、個人事業から法人化を検討しているクライアントからこんな質問を受けました。「会社を作れば消費税が2年間ゼロになるって本当ですか?」
答えは「条件を満たせばYes、ただし落とし穴が2つある」です。
この落とし穴を知らずに設立してしまうと、2年分の免除どころか初年度から課税対象になるケースもあります。年商1億円なら2年間で軽く数百万円の差が出る話ですから、設立前に一度しっかり理解しておく価値は十分あります。
原則は「2年間は免除」
新しく会社を設立した場合、消費税の基準となる「基準期間」(前々事業年度)が存在しないため、原則として最初の2年間は消費税の納税義務がありません。これは法律で認められた制度であり、個人事業主が法人化する最大のメリットの一つとして挙げられます。
消費税率10%で計算すると、年商1億円の会社なら消費税は年間で数百万円規模になります。それが2年間まるごと免除されるとすれば、その差は1,000万円近くになることも珍しくありません。ただし、この「2年免除」を受けるためには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。
落とし穴① 資本金1,000万円以上で即・課税
法人設立の際、「資本金をいくらにするか」は対外的な信用力や融資の観点から考えがちです。しかし消費税の観点では、資本金の金額が免除の可否を左右する決定的な要素になります。
資本金が1,000万円以上の場合、設立した初年度から消費税の課税事業者とみなされます。つまり、2年間の免除がスタートから消えてなくなるわけです。
「1,000万円以上のほうが取引先への信頼感が増す」という理由で資本金を設定する方もいますが、消費税の負担を考えると慎重に検討すべきです。対外的な事情でどうしても必要なケースを除いて、消費税の免除を狙うなら資本金は999万円以下に抑えるのが基本の設計です。
落とし穴② 「特定期間」という第二の関門
資本金の問題をクリアしても、もう一つのルールが待ち構えています。「特定期間」と呼ばれる規定です。
特定期間とは、設立後最初の6ヶ月間のこと。この期間中の売上高、または給与の支払額のいずれかが1,000万円を超えると、2年目から消費税の納税義務が生じます。
具体的にイメージしてみましょう。4月に法人を設立して、最初の6ヶ月(4〜9月)で売上が1,200万円になったとします。そうなると、翌年度(2年目)には消費税の納税が発生します。「2年は免除のはずでは?」と驚く社長が毎年後を絶ちませんが、特定期間のルールを見落としていたケースがほとんどです。
注目すべきは「売上または給与」どちらかでも超えればアウトという点です。売上が900万円に抑えられていても、役員報酬や従業員給与の合計が1,000万円を超えていれば同様に2年目から課税されます。
設立月の選択で「特定期間」をコントロールする
設立月を意識することで、特定期間に売上が積み上がりにくい構造を作ることができます。
事業年度の終わりに近い月(たとえば11月や12月)に設立すると、最初の事業年度が短くなります。特定期間は「設立後6ヶ月」ですが、短い初年度の場合は特定期間の取り扱いが変わるケースもあります。
一方、1月や4月に設立すると、設立直後から6ヶ月フルに売上がカウントされます。ビジネスの立ち上がりが好調なほど、特定期間のハードルを超えやすくなるのです。
設立月と資本金の設定をセットで考えることで、消費税の免除期間を最大化する設計が可能です。ただし、「どの月に設立するのが最適か」は事業計画や売上見込みによって変わるため、設立前に税理士と一緒にシミュレーションしておくことを強くおすすめします。
あえて課税事業者を選ぶべき場合もある
ここまで「免除を活かす方法」を中心にお話ししてきましたが、逆に免税事業者でいることが不利になるケースもあります。
設立初年度に大型の設備投資や高額な内装工事がある場合、支払った消費税(仕入税額控除)の還付を受けられる可能性があります。この場合はあえて課税事業者を選択したほうが手元に戻るお金が多くなることがあります。免税が「必ずお得」とは言い切れないのが消費税の複雑なところです。
まだ法人設立の時期や資本金の設定を大まかにしか考えていないなら、動く前に一度立ち止まることをおすすめします。設立後にやり直しはできませんが、設立前であれば選択の幅は十分にあります。事業計画の数字を持って、税理士に相談してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。