「うちの顧問税理士から特に何も言われなかったんですが、これって経費にならないんですかね?」

先日、年商3億の建設業を営む社長からこんな連絡が来ました。送ってもらった試算表を確認すると、本来なら計上できるはずの支出がいくつも抜け落ちていました。年間にならすと、おそらく300万円近い計上漏れです。

実効税率30%で計算すると、約90万円を余分に払っていることになります。毎年、です。

経費の「認定漏れ」は、脱税でも違法でもありません。ただ「知らなかっただけ」で損をする、非常にもったいない話です。今回は、中小企業の社長が特に見落としがちな3つのポイントをお伝えします。

自宅家賃を会社が払う「役員社宅」という仕組み

ひとつ目は、役員社宅の活用です。

会社が社宅を借り上げ、役員がその物件に住む形を取ると、家賃の大部分を会社の経費にできます。「自宅家賃を会社経費にできる」と聞くと意外に思う方も多いのですが、これは国税庁も認める正式な制度です。

仕組みとしては、会社が賃貸契約を結び、役員は「賃貸料相当額」と呼ばれる少額の家賃を会社に払います。この金額は物件の規模や固定資産税評価額をもとに計算しますが、実際の家賃の10〜20%程度が目安になるケースが多いです。残りの80〜90%が会社の経費になるイメージです。

家賃15万円の物件であれば、年間で100万円超の経費計上になる計算。名義変更の手続きや会社名義での契約が必要なので多少の手間はありますが、毎年の節税効果を考えると整備しておく価値は十分あります。すでに自宅に住んでいる場合でも、次の更新タイミングで切り替えられることがあるので、まず顧問税理士に相談してみてください。

2024年4月に変わった「飲食費1万円ルール」を使っているか

ふたつ目は、交際費の中でも飲食費の判定ルールです。

2024年4月の改正で、社外の人との飲食費について「1人あたり1万円以下」であれば交際費に該当せず、全額損金として算入できるようになりました。改正前は「1人あたり5,000円以下」だったので、適用できる範囲がかなり広がっています。

ただし、この特例を使うには5つの記録が必要です。具体的には、飲食の年月日・参加者の氏名や名称・参加者との関係・金額・飲食店名と所在地です。

「レシートを取っておけばいい」と思っていると、税務調査で損金算入を否認されるケースがあります。経費精算ソフトや精算申請の備考欄に習慣として書き残す仕組みを作っておくと安心です。

年間の接待飲食費が多い会社ほど、この記録漏れが大きなロスにつながります。「誰と何のために飲んだか」を残す文化をチームに根付かせるだけで、経費認定の安全性がぐっと上がります。

30万円未満の備品は「買った年に全額経費」にできる

みっつ目は、少額減価償却の特例です。

通常、固定資産として購入した備品は耐用年数に応じて分割で費用化されます。しかし中小企業であれば、30万円未満の備品は購入した年に全額経費として落とせます。これを「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」といいます。

たとえば、25万円のノートPCを4台購入した場合、本来は数年かけて費用化するところを、100万円を当期に一括で経費計上できます。決算月が近づいて利益が出すぎているなと感じたとき、この特例を活用して設備投資を前倒しするのは有効な選択肢のひとつです。

ただし、年間の合計が300万円を超える部分は特例の対象外になります。まとめ買いを検討するときは金額の上限を確認しながら動くことをおすすめします。

「知らない」が一番高くつく

役員社宅・飲食費の記録・少額減価償却。どれも知っている方には当たり前のことかもしれませんが、実際には「言われてみれば使っていなかった」という声を毎年のように聞きます。

この3つを合わせると、年間300万円前後の計上漏れになるケースは決して珍しくありません。実効税率30%で換算すると、90万円の税負担増です。5年続ければ450万円の差になります。

特に役員社宅は仕組みを整えるのに時間がかかるので、次の期を迎える前に動き始めるのがおすすめです。まずは顧問税理士に「社宅の借り上げについて確認したい」と一言投げてみるところから始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。