先日、法人設立から2年目を迎えた社長からこんな相談を受けました。

「売上は個人事業のときより増えているのに、なぜか手元にお金が残らないんです……」

話を聞いてみると、原因はすぐにわかりました。法人でしか使えない「経費の仕組み」をほとんど整備していなかったのです。旅費規程なし、社宅契約なし、保険も最低限。せっかく法人化したのに、個人事業主と同じ感覚で経営を続けていたわけです。

正直、こういうケースは珍しくありません。設立直後は手続きに追われて、節税の仕組みづくりが後回しになりがちです。でも、整備が遅れた年数ぶんだけ、取り戻せない節税機会を逃し続けているのも事実です。

今日は、正しく整備するだけで年間300万円以上が経費になる7つの項目の中から、特に効果が大きいものをお伝えします。

第3位:旅費日当 ── 紙1枚で年24万円が丸ごと非課税に

まず手をつけやすいのが「旅費規程」の整備です。

出張のたびに支払う「日当」は、税法上の給与にあたりません。つまり会社の経費にもなり、受け取る役員・従業員にも所得税がかからない、という二重のメリットがあります。日当5,000円で月4回の出張があれば、それだけで年24万円が非課税で手元に残ります。

これを給与として支払えば、所得税と社会保険料がかかります。旅費規程を整備しているかどうかで、同じお金の使い方でも手取りがまったく変わってくるのです。

必要なのは「旅費規程」という社内規定を1枚作成するだけ。それにもかかわらず、設立から何年も経つのに旅費規程がない法人は驚くほど多いです。今期中に整備しておくことを強くおすすめします。

第2位:役員社宅 ── 家賃の大半が法人の経費になる

次に効果が大きいのが「役員社宅」の仕組みです。

簡単に言うと、会社が社長の自宅を借り上げて、社長に貸し出す形をとります。会社が月20万円の家賃を払い、社長はそのうち国税庁の計算式で算出した「賃料相当額」だけを会社に支払う。この賃料相当額は実際の家賃よりかなり低く設定されるため、差額が丸ごと法人の経費になります。

物件の床面積や固定資産税評価額によって金額は変わりますが、正しく整備できれば年間で数十万〜百万円単位の節税効果が生まれます。次の契約更新のタイミングで税理士に相談してみてください。

ひとつ注意点があります。「節税になると聞いたからとりあえずやってみた」という独自計算はNGです。計算式を誤ると税務調査で否認されるリスクがあるので、必ず正しい計算を経て導入することが前提です。

第1位:複数の仕組みを組み合わせる

旅費規程と役員社宅だけでも十分な効果がありますが、年間300万円超を目指すには複数の仕組みを組み合わせる必要があります。

代表的な項目をいくつか挙げると、法人保険(解約返戻金がある保険で保険料を経費計上)、社用車(法人名義にして維持費を経費化)、iDeCo(役員自身の節税としても有効)、福利厚生費(社員旅行・健康診断・資格取得費用など)といったものがあります。

ひとつひとつの金額は大きくなくても、7項目を正しく積み上げると合計で年300万円を超えることは珍しくありません。法人税の実効税率を約30%とすると、300万円の経費増は約90万円の節税に相当します。これは決して小さな数字ではありません。

ただし、それぞれに適用要件があります。「なんとなくやってみた」では、税務調査で否認されるリスクもゼロではありません。個別の条件については、必ず税理士に確認したうえで導入するようにしてください。

設立直後の今が、一番大事

経費の仕組みを整えるのに、早すぎることはありません。逆に、放置すればするほど損をする構造になっています。

旅費規程は今日決めれば今月から使えます。社宅は次の契約更新で切り替えられます。法人保険やiDeCoも、今期中に始めれば今期の決算から効果が出ます。一度仕組みを作ってしまえば、あとは毎年自動的に節税効果が積み上がっていきます。

まだ旅費規程を作っていないなら、まずそこから手をつけてみてください。紙1枚の話です。それだけで年24万円が手元に残るなら、やらない理由はないはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。