先日、愛知で製造業を経営している社長から、こんな相談を受けました。

「毎年2000万円以上の税金を払っているけど、どうにかならないか。妻も長男も会社の仕事を手伝っているのに、給与を払っていない」

これを聞いて、すぐにピンときました。家族2人を役員にするだけで、年間200万円以上の節税が狙えます。しかも、難しいスキームは一切不要です。

「妻と長男を役員に」——その一手が年200万円を生み出した

冒頭の田中社長(年商2億円)のケースを、もう少し詳しく見てみましょう。

奥さんと長男を取締役に就任させ、それぞれ月25万円の役員報酬を設定しました。これだけで、法人の損金が年間600万円増えます。法人税率を30%として計算すると、法人税だけで年180万円の削減です。

さらに大きいのが「所得分散効果」です。オーナー社長1人に集中していた所得を家族3人に分けることで、全員の適用税率が下がります。この効果も合算すると、年200万円超の節税を実現しました。

なぜ家族役員への報酬が節税になるのか

法人の役員報酬は、条件を満たせば全額損金(経費)として計上できます。損金が増えれば課税所得が減り、法人税が下がる。これが基本の仕組みです。

個人事業主の家族への給与(いわゆる青色事業専従者給与)には上限の縛りが強く、認められる範囲も限定的です。一方、法人の役員報酬には金額の上限制限がないため、合理的な範囲であれば高額な報酬を設定できます。

つまり、法人を持っているオーナー社長には、家族を役員にするという大きな節税チャンスが最初からあるわけです。

税務調査で認められる3つの条件

「家族を役員にすれば節税できる」と聞くと、「名目上だけ役員にすれば良い」と誤解する方がいます。しかし、それは絶対にNGです。税務調査で否認されると、過去に遡って追徴課税が来ます。

認められるためには、以下の3つを必ず守ってください。

① 実際の業務を担当させる

役員報酬が認められるためには、実際に会社の業務に従事していることが前提です。「経理の一部を担当」「営業サポート」「現場管理補助」など、具体的な職務を持たせてください。週に何時間、どんな業務をしているかが後で説明できる状態にしておくことが重要です。

② 期首に定期同額で決定する

これが最も重要なルールです。役員報酬は、事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決定し、その後1年間は毎月同額を支払う「定期同額給与」の形を取る必要があります。途中で金額を変更すると、変更分が損金に算入できなくなります。

決算前に「今年は利益が多そうだから、役員報酬を上げよう」というのは通用しません。利益が読めてきた段階では、もう変更できないのです。来期に向けて、いまの時期から計画を立てることが大切です。

③ 議事録に職務内容を記録する

株主総会や取締役会の議事録に、役員の職務内容と報酬額を明記しておきます。「妻:経理・総務全般を担当、月額25万円」のように具体的に記載することで、税務調査での説明資料になります。議事録は会社法上の義務でもあるので、整備していない会社は今すぐ対応しておくべきです。

設定金額は「合理的な範囲」で

役員報酬の金額に法律上の上限はありませんが、「業務内容に対して明らかに高すぎる」と判断されると否認リスクが高まります。

目安として、同じ業務を外部に委託した場合の相場を参考にするのが無難です。経理や総務補助なら月15〜30万円、現場管理なら月20〜40万円程度が一般的な範囲です。最終的な金額は税理士と相談しながら決めてください。

取り組むなら「今期中」が鉄則

繰り返しになりますが、役員報酬の変更は期首から3ヶ月以内にしか認められません。決算が近い時期に動いても、反映できるのは次の事業年度からです。

家族が実際に業務に関わっているにもかかわらず、報酬を払っていない状態はもったいないどころか、機会損失です。特に年商1億円を超えてきた段階の社長には、家族役員化は真っ先に検討すべき節税手段の一つです。

「妻は経理を手伝っているけど、給与は払っていない」「子供が入社したばかりで、役員にするか迷っている」——そんな状況であれば、次の事業年度の開始前に税理士に相談することをおすすめします。来期の役員報酬設計を、今から動き始めておくのが最善の一手です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。