先日、年商3億円の建設会社の社長から、こんな連絡が入りました。「6月に住民税通知書が届いたんですけど、去年より20万円以上増えていて。収入はほぼ変わっていないのに、なぜ?」
調べてみると、前年の確定申告で小規模企業共済の掛金控除証明書を添付し忘れていたことが判明。100万円超の控除が丸ごと抜け落ちていました。「たかが書類の添付漏れ」が、気づかないうちに数十万円の損失になっていたケースです。
住民税通知書は「節税の答え合わせ」
毎年6月に届く住民税通知書。多くの社長は「今年もこんなもんか」と棚の上に置いてしまいます。でも実はこの書類、前年の申告内容が正しく反映されているかを確かめられる、年に一度の貴重なチェックポイントなんです。
通知書の右側に「所得控除の内訳」という欄があります。社会保険料控除、生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除……これらの数字が、前年に申告したはずの金額と一致しているでしょうか。
一致していれば問題ありません。でも「あれ、この金額、小さくない?」と感じたら要注意です。
社長が見落としがちな控除トップ3
長年、社長の税務を見てきた経験から、申告漏れが多い控除を3つ挙げます。
まず小規模企業共済の掛金控除。年間最大84万円まで全額控除できる強力な制度ですが、「毎月引き落とされているから大丈夫」と思っていても、確定申告で証明書の添付を忘れていたというケースが驚くほど多い。「払っている」と「申告できている」は別の話です。
次に生命保険料控除。契約が複数あると証明書の枚数も増えます。一枚でも添付漏れがあれば、控除額がそのぶん減っています。特に新旧の保険が混在している方は要確認です。
3つ目がiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金控除。全額が所得控除になるはずが、証明書を年末調整や確定申告で提出し忘れたまま、というケースを何度も目にしてきました。
100万円の控除漏れは、いくらの損になる?
「控除が漏れていてもたいした金額じゃないでしょ」と思われる方もいるかもしれません。でも少し計算してみましょう。
100万円分の所得控除が漏れていた場合、住民税の税率は一律10%なので住民税だけで10万円の損です。さらに所得税も上乗せされます。課税所得が4,000万円超の社長なら所得税の実効税率は45%近い水準。住民税と合算すると実質55%前後の税率がかかります。
つまり100万円の控除漏れで、55万円前後の過払いが生じている可能性があるということです。毎月コツコツ節税しながら、申告の手続きミスで数十万円を余分に払っていたとしたら、確認しないわけにはいきませんよね。
通知書が届いたら、今すぐやること
やることはシンプルです。まず通知書の「所得控除の内訳」欄を開きます。次に、前年の確定申告書の控除欄(または顧問税理士に送った申告書の控え)と照合します。
気になる差異があれば、税理士に「小規模企業共済の控除、ちゃんと入っていますか?」と一言確認してみてください。もし漏れが見つかった場合は、確定申告の「更正の請求」という手続きで過払い分を取り戻せます。原則として申告期限から5年以内であれば遡って申請できます。
気づいた今が、動くタイミング
住民税通知書は6月に届きます。つまり今このタイミングが、前年申告の内容を見直せる絶好の機会です。
「先生、この控除の金額、合ってますか?」のひと言が、数十万円の還付につながることがあります。通知書が手元にある今のうちに、ぜひ税理士に確認を取る習慣をつけておいてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。