先日、顧問先の社長からこんな連絡が来ました。「毎年ふるさと納税をやっているんですが、もっとできたって聞いて……どういうことですか?」
話を聞いてみると、毎年ネットの「かんたんシミュレーター」に役員報酬の金額を打ち込んで、表示された上限額ギリギリまで納税していたとのことでした。これ、実はよくある落とし穴です。
「役員報酬だけ」で計算するのが最大のミス
ふるさと納税の上限額は、「その年の所得税と住民税の合計」から逆算して決まります。給与所得(役員報酬)だけの会社員であれば、シミュレーターの計算でもそれほど大きくは外れません。
ただし、社長の場合は話が違います。
不動産収入、株の配当、副業収入、あるいは法人からの貸付利息など、役員報酬以外の所得を持っている方が多い。これらをすべて合算した「総所得」をベースに計算しないと、本来できるはずのふるさと納税の額を大幅に見誤ります。
具体的にどれくらい差が出るのか
役員報酬が年2,000万円のケースで考えてみましょう。役員報酬のみで計算すると、ふるさと納税の上限の目安はおよそ50万円前後です。
ここに、たとえばマンション経営から年間500万円の不動産所得があったとします。この場合、上限は大きく跳ね上がり、2倍以上になるケースも珍しくありません。つまり、同じ年に同じだけ稼いでいても、計算の仕方ひとつで返礼品の量が倍近く変わってしまうわけです。
これを「損した」と表現するのは少し正確ではないですが、本来受け取れたはずの返礼品を取り逃がしていたという意味では、やはり「もったいない」という話です。
12月になってから気づいても手遅れ
ふるさと納税は12月31日が期限ですが、年末ギリギリに正確な上限額を把握しようとすると、間に合わないことがあります。
理由のひとつは、不動産所得や配当所得は年が明けてから確定する部分もあるからです。概算でやるにしても、秋以降に税理士と一度シミュレーションをしておかないと、結局「役員報酬ベースで安全に収めておこう」という判断になりがちです。
余裕を持って動くなら、10月〜11月が理想的なタイミングです。この時期に当年の所得見込みをざっくり固めて、税理士と上限額を確認しておく。それだけで、12月に慌てることがなくなります。
もうひとつの落とし穴:「2,000円の自己負担」の意味
細かい話ですが、ふるさと納税は「2,000円を超える部分が控除される」仕組みです。何件寄付しても、年間で必ず2,000円は自己負担になります。
これ自体は小さな金額ですが、上限を超えた部分は控除されません。つまり、上限いっぱいまで使い切るのが最もコスパが良く、上限を超えると純粋な「支出」になってしまいます。正確な上限把握が重要なのはこのためでもあります。
社長こそ、毎年「確認する習慣」を
ふるさと納税は、合法的に節税効果を得られる数少ない手段のひとつです。とはいえ、その恩恵を最大限に受けるためには、「正確な上限額」を知ることが前提になります。
ネットの無料シミュレーターは手軽ですが、複数の所得がある社長には対応しきれません。毎年秋に税理士へ「今年のふるさと納税、いくらまでできますか?」と一言確認する習慣をつけておくことをおすすめします。
たったその一言で、返礼品の量が変わってくるかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。