先日、顧問先の社長からこんな連絡が届きました。「税務署から調査に来ると電話があった。どうすればいい?」——受け取った側は、一瞬息が止まるような感覚になります。
税務調査で追徴課税500万円以上を請求されるケースは、決して珍しくありません。さらに「悪質」と判断されると、重加算税として本税の35%が上乗せされます。500万円の追徴なら、最終的な支払いは675万円になる計算です。
怖いのは、故意の不正ではなく「書類の不備」が原因で否認されるケースが多いという点です。今日は、税務調査の前に必ず確認しておくべき3つのポイントをお伝えします。
交際費の領収書に「5つの情報」はそろっていますか?
交際費は税務調査で最も狙われる科目のひとつです。「領収書があれば大丈夫」と思っている社長も多いのですが、実はそれだけでは不十分です。
税法上、交際費として認められるためには、①日付、②参加者の氏名と会社・役職(相手との関係)、③参加人数、④金額・店名・所在地、⑤目的(何のための接待か)——この5項目が必要です。
領収書の裏にひと言メモを書くだけでも構いません。ただし、1項目でも欠けていると「全額否認」になります。10万円の会食が、目的の記載がないだけで丸ごと否認される——そういう事例は実際に起きています。
今すぐ直近3ヶ月の交際費の領収書を確認してみてください。目的の記載が空欄になっているものが、思いのほか多いことに気づくはずです。
役員報酬を変えたなら、議事録は残っていますか?
役員報酬は「定期同額給与」として認められる場合にのみ損金算入できます。事業年度の途中で金額を変更した場合は、株主総会または取締役会の決議が必要です。
「うちは社長一人だから」「口頭で決めた」——これは税務署には通じません。家族経営でも、一人会社でも、議事録がなければ変更の事実を証明する手段がないのです。
議事録は複雑なフォーマットは必要ありません。日付・出席者・決議内容・押印があれば、1枚の書面でも有効です。もし過去の変更に議事録がなければ、今からでも顧問税理士に相談して対応策を確認しておくことをおすすめします。
通帳の入出金と請求書・契約書は突き合わせできていますか?
税務調査で必ずチェックされるのが、通帳と書類の「突き合わせ」です。支払った日付や金額が、請求書や契約書と1円でもズレていると、説明を求められます。
特に多いのが「入金が先で請求書が後」「振込日と請求書の日付が数ヶ月ずれている」といったケース。経理的には処理されていても、税務署の目から見ると「架空取引の疑い」に映ることがあります。
決算前に一度、直近1期分の通帳と請求書をセットで並べてみてください。説明できないズレがあれば、今すぐ契約書や発注書を確認して補完する作業が必要です。
調査は、準備ができていない会社にやってくる
税務調査は事前通知がある場合がほとんどですが、実地調査までの準備期間は通常1〜2週間程度です。その短い時間に書類を整える余裕はほとんどありません。
準備は「調査が決まってから」ではなく、日頃からの習慣がすべてです。交際費の5項目記載・役員報酬の議事録作成・通帳との突き合わせ——この3点を今期の経理ルールに組み込んでおくだけで、リスクは大幅に下がります。
顧問税理士がいる方は、次の定期ミーティングでこの3点の状況を確認してみてください。まだ顧問税理士がいないという方は、「税務調査対策」を得意とする税理士に相談するタイミングかもしれません。書類の整備は、やればやるほど会社を守る「保険」になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。